少し前のニュースですが『福井新聞』に一乗谷朝倉氏遺跡復原町並で最年少ボランティアガイドとして活躍されている瀬戸浩太郎さんの記事が掲載されました。
瀬戸さんには2年前に丸岡城で開催した、団員総会のスタッフとして手伝っていただいたこともあり、記事を見たときに「おお、瀬戸さんだ!」と自分のことのようにうれしく思いました。本人にも「すごいですね」とメールしたのですが、同級生や同僚をテレビや新聞を通じて見つけたときってなんともいえない幸せな気持ちになりますよね。
ちなみにこれが団員総会のときの様子です。
とくにスタッフだけの写真は撮ってなかったのですが(次回から撮ろう)、くまモンTシャツを着てくれてました。
去年も今年も団員総会は開催できていないのですが、またどこかのお城でみんなで集まりたいですね。来年こそ再開できることを願っています。
ただ今日の主題は団員の活躍を見てうれしいという話ではなく、お城のボランティアガイドの実情と課題についてです。
ボランティアガイドは高齢化と人手不足が進んでいる
瀬戸さんは最年少ガイドということで記事になっていましたが、裏返すとそれは若いことがニュースになるという話で、全国的に見ると各地のボランティアガイドは高齢化が進んでいます。
そもそも時間に余裕のある人しかボランティアガイドをつとめることができないので、どうしてもリタイアした方が中心になってしまうのですが、ちょうど同じ時期に松江市観光ボランティアガイドの会が人手不足で困っているという『読売新聞』の記事が出ていました。
記事によれば、
- 近年、定年の延長や退職後の再雇用など雇用環境の変化で、ガイドの担い手確保が年々難しくなっている
- コロナ禍により(不特定多数の人との接触が発生する)ガイドの志願者も減っている
- その反面、感染症対策としてガイドの対応人数をひとりあたり20人→10人に減らしたので倍の人数が必要になっている
という状況だそうで、これは全国的に見ても同じ傾向だと思われます。
「マンガでわかるシリーズ」の現地取材など、ぼくもこれまで何度も地元のボランティアガイドのお世話になってきましたので、この地元ガイドが抱える問題については以前からいろいろと考えてきました。
七尾城の取材でお世話になった初見さんも、丸岡城の取材でお世話になった大霜さんも、みなさん最新の学説も反映しようと熱心に勉強されていて、めちゃくちゃ助けられました。
とくに「マンガでわかる」シリーズは、通説に則った英雄譚でも、また逆張りの判官贔屓的なストーリーでもなく、わかっているかぎりの事実をもとに別の角度から光を当ててみることを意識しているため、七尾城での遊佐続光の行動に代々の守護代家としてのプライドという解釈を加えたり、(一般的に本多氏の印象が強い)丸岡城において有馬誉純(なずみ)を中心人物に取り上げることができたのは、ガイドの方との会話がきっかけになっていることも多いです。
10年後も現地ガイドを依頼できるようにするには
とはいえ先の松江城のケースのように、現地ガイドの存続は危機的状況にあります。
人手不足でボランティアガイドが成り立たないのであれば、彼らのトークを録音・撮影して残しておき、それをスマホのアプリで再生できるようにすれば初見さんや大霜さんの軽妙で知的好奇心が満たされるガイドを保存することはできます。
一時期はこのアイデアを真剣に検討したこともありました。無料のアプリをインストールして、各お城のガイドボイスが300円で購入できるとかね。でもちがうなと。
ガイドの価値は「地元の方と交流することそのもの」にもあるわけで、それが失われてしまうのは正しい解決策ではないといまは考えています。
これは自分が二条城のガイドをやってみて実感したことでもありますが、やっぱりガイドってライブなんですよね。参加者の表情やリアクションに応じて話す内容も変えているし、(わかりやすくなりそうだと思えば)時事ネタも随時入れているので、録音したのを流せばオッケーかというとそんなことはないのです。
たまに観光地でスイッチを押せばガイドの音声が流れる機械がありますが、あれは案内板の文章を読み上げてるだけなので、ぼくが求めているガイドではありません。
ではどうするか。
これは経済的に自立できるようにする以外に方法はないと思います。
- 副業として(理想は専業で)ガイドを仕事にして稼げるようにする
- ガイドの依頼を簡単にして利用者をいまの数倍に増やす
まずはボランティアをやめてしまうことです。
いまも500円とか1000円をガイドの交通費などの名目で払うことがありますが、もっとしっかりと2000円でもそれ以上でも時間と内容に応じて決めればいいのです。
もちろんこれは質の向上や、質の担保とセットになります。
二条城ではタクシーの運転手が修学旅行生のガイドをしていることがけっこうありますが、いまだに鶯張りの廊下を「敵の侵入に気づけるよう」とまちがった説明をしているのをたまに聞きます(あれは経年劣化で音が鳴るだけで、敵が廊下を歩いて侵入するはずがない)。
でもここはいまでもすでに取り組まれています。松江城の記事にもガイド養成講座を開いている(その受講者しかガイドとしてデビューできない)とありますし、ぼくが話を聞いたいくつかの団体もみなさん定期的に勉強会を開催されています。
あとは自分たちが提供する価値に見合った値付けをするだけです。
もうひとつは需要の取りこぼしを減らすことです。
観光地化したお城でもないかぎり、当日その場でガイドを依頼することはできません。多くのところは「2週間以上前に、FAXで受付」という感じです。これではガイドの利用者は増えません。
ガイドの人数が少ない以上、シフト調整の関係で前もって予約してもらわないとむずかしいという現場の事情はよくわかりますが、利用者目線でいうとこれは非常に利用しづらいのも事実です。
だからそのお城でガイドを依頼できることがひと目でわかり、そのままネットで申し込める(当日は無理でも前日か前々日くらいまでは受け付けられる)ようになれば、まちがいなく利用者は増えます。
たとえば攻城団のお城のページにガイドの予約ボタンがあれば、利用してみようと思う人はかなりいらっしゃるんじゃないでしょうか。
クレジットカードで先払いなら20%オフとかにすれば未回収リスクも避けられますしね。
(いまもドタキャンのリスクはあるはずだけど、どうやって回避してるんだろう)
じつはこういうことのモデルケースになれるよう、攻城団では二条城ガイドツアーを開催していました。
このガイドツアーは参加費として5000円(入城料込み)くらいいただいているのですが、その付加価値としてガイドブックや参加者限定缶バッジなどのお土産を用意したり、約3時間かけてじっくり案内したり、同行したカメラマンがツアー中の様子を撮影してあとで写真を渡すなど、思いつくかぎりの要素を盛り込んでいます。
いまなら特別御城印をプレゼントとかやってもいいかもしれませんね。
ぼくひとりでできるのはせいぜい月に1回くらい二条城でガイドをすることなので、全国でお城のガイドをされている個人や団体の方々に攻城団の知名度や集客力を利用していただければと思っています。
なによりぼく自身が「攻城団でお城を検索して、そのままガイドに申し込める」ことを願っています。
以下のように城メモで記事にして、リンクで紹介するだけなら無料でやりますので、もしご興味を持っていただけた関係者の方がいらっしゃったならご連絡をお待ちしています。
(有償になりますが)受付サイトなどの製作もお手伝いできるので、攻城団といっしょに何かやれそう、やりたいという方はまずはお問い合わせいただけるとうれしいです。