日本100名城に選ばれるような有名なお城はそれはそれで素晴らしいですが、甲斐上野城のようにけっしてメジャーではないものの地域に愛されたお城もまた魅力的ですよね。その溢れた愛の形のひとつが地元和菓子屋さんによる城もなかだと思います。
おいしそうな写真とあわせてじっくり楽しんでください!!
今回はJR中央線・中央本線でいく、東京都八王子城と山梨県の甲斐上野城(椿城)の城もなかと出会う旅に、城めぐりをしながら行ってきました。
八王子城というと、日本100名城のひとつでもあり、天守はないけどガンガンの石垣と巨大な平城・江戸城と双璧を成す、東京都の山城です。
そして甲斐上野城(椿城)のほうは、山梨の武田信玄のお母さんの実家といわれ、今も椿がたくさんある椿城という別名のとおりの城跡です。
このふたつの城と城もなかは、どちらも印象的で心震える出会いとなりました。
八王子城の城もなか
「八王子城最中」(千松園)
八王子城もなかは、以前(かなり前の2019年)に、オススメの「城もなか」ベスト5(第2位)として紹介させてもらった城もなかです。
また、お店にお邪魔して、この大好きな城もなかに再会でき、懐かしい感動に目が潤みました。
皮は、五層立体直方体対角線割型。
今回、お店の店員さんともお話しさせていただきました。
この皮が、あんこをたくさん詰められるように工夫されたオリジナルの型で作られているということを確認いたしました。
皮を工夫し、あんこを詰めることへのお店のこだわりを直にお聞きでき、尊いものに触れたような気持ちになりました。
この五層の迫力は相変わらず!
八王子城の存在感、地域における誇り、などなどが五層の天守に体現されているようです。
五層もあるので一層一層破風や屋根の形には少しずつ大きさを含めて違いを持たせ、凝ったデザインです。何かのモデルがあったのか…気になるところ。二層三層の屋根にある三つの千鳥破風からすると姫路城っぽいな。
少し異なるところがあるけども。
石垣部分も細かい! ぼこぼこ感から野面積みのようですが、五層の天守で野面積みってのはあるのか?と思いつつ、神戸城(三重県)では野面積みの天守台に五層六階の天守があったとされるので、まぁなくはないのか? なんて考えを巡らせてしまいます。
城もなかから生まれる城への想いを馳せるあれこれも、楽しみのひとつですね!
パッケージは八王子城もなかと味のある黒文字で名前の書かれたシンプルな透明フィルム。
包装としての役割はしっかり果たしつつ、透明なフォルムで魅せる五層の迫力、そして君の名は? というまでもなく、でーんと顔に書いてあるという演出。かっこいいすね。
包み隠すことさえない、ありのままこそ最強、我が名は八王子城もなか、その名に誇りを持っている!! と言わんばかりのスタイルに、ははぁーと平伏してしまいそうw
あんは、粒あん。大納言小豆使用。こだわりの皮で生み出された空間にふんわりかつどっしりとあんが詰まっている。
ふんわりとあんが入っているので、皮との分離がしやすい。作りたてで時間をおいていないということもあるのでしょう。
そして皮とあんが密着していないことから、皮がぱこってとれました。片方の皮にあんが入ってないように見えますが、2枚目の写真からもおわかりのようにこんもりあんこが、ぽてっと入っていて皮が優しく包んでいるということがわかります。
たっぷりのあんを包む、威風堂々の面立ちの皮の内なる優しさを見ることができました。
直方体対角線割タイプではお決まりの「怪獣喰い」という、怪獣気分で、城を真上からかぶりつく食べ方でいただく。
この喰われた城を見ると、なんだか心が晴れる気がする。破壊的なストレス解消によるものなのか、城を喰った満足感なのか。
いずれにしても、このタイプは「怪獣喰い」を一回はすることにしています(笑
石垣だけになった城もなかの破城感や沢山ある石垣だけの城をイメージさせるのか、これだけでも十分城もなかとして売れそうな気がする。
中身の見える城もなかというのもありだよね。ぜひ石垣だけのお城の地域で城もなか化してほしいところです。
買ったところは、千松園さんです。
創業85年の三代続く、老舗和菓子店。製法は伝統を継承し、国産素材にこだわるお店と紹介されています。
お店の雰囲気は、昔ながらの町の和菓子屋さんといった感じで、敷居は低く、めちゃくちゃ親しみやすいお店。いろいろお話も聞かせてもらえて、感謝感謝でした。お気軽に入ってほしいと思います。
八王子城もなかの単品が置いてある木箱が老舗感を醸し出し、いい味を出しています。年季を感じますね。
昔からよく使い込まれているものには、様々な思いや経験が染み込んでいる様で愛しさを感じます。そういう演出もまた、売り場で城もなかを目立たせるものなのかもしれません。
ほかにも、所狭しとさまざまなお菓子が置いてあるんですが、富山県の名物お菓子「白エビせんべい」も置いてくださっています。
富山県が地元の私には、さらなる親近感がわいてしまいました。
この時は、近々お城好きの方々にお会いする予定もあったので、箱買いもしました。
ちなみに箱買いした際、もなかをガードしてくれる大層しっかりした箱に入れていただけるほか、内のし的に箱に付いている紙がお城が描かれたものです。
城好き、城もなか好きにはありがたい配慮。
一個でも結構ボリューミーなので、箱買いはひとりだと食べ切るのが大変なので、ぜひシェアしてください。
お店の場所は、八王子駅から徒歩16分程度の立地。
少し離れていますが、八王子の街を散歩がてら向かうのが良い! だいたい私はご当地ラーメンの八王子ラーメンを食べています。
八王子城の最寄りは高尾駅なので、そこから都心の方への帰り道に八王子駅で下車して立ち寄りました。
御城印も八王子駅隣接のサザンスカイタワー3階の桑都日本遺産センター 八王子博物館で購入できる(八王子城に行ってきた証明として写真など必要)し、お帰りの際は、八王子駅途中下車がおすすめです。
営業時間 9:00~18:00 / 定休日 水 / 電話 042-622-5664
最近、八王子駅の駅中にある八王子物産店「はちまるステーション」さんでも、八王子城もなかが買えるようになりました!!!
千松園さんまでは行く時間がない!! 八王子駅に寄ったついでに……という方にも、八王子城もなかを味わっていただける機会が増えたのではと嬉しい限りです。
ぜひ八王子駅にお越しの際には、ちょっと寄ってみてください。
ほんと、城もなかが駅の近くのお土産コーナーで買うことができるというのはなかなかないので、こういうところがもっともっと増えてくれると、車でなく公共交通機関で城攻めする城好きとしては嬉しいんですが。
さらに、駅近くのお土産屋さんで売っていても、バラ売りしてないことが多々あります。
ひとりで食べるのに箱買いは……と敬遠し、買わないということがないように、こちらではバラ売りもしてくださっています。
ありがたやー。
欲を言えば、バラ売りには、バラ売り用の箱が欲しい。
せっかくのこの美しいフォルムを崩さず運ぶ手立てとして箱が必要なのです。もなかは持って帰っている間に何かの圧に屈し、食べようかと広げてみると、鉄球でも天守にぶち込まれたような変形を遂げていることがあります。
せっかくの美しさ、匠の技巧の結晶のもなか皮を誰かに見せたかったのに、驚かせたかったのに……となってしまうのは悲しすぎる。
特に駅のコーナーでは、車で来ている人は少ないと思うので、ぜひバラ売り用の箱付きで販売してほしいと切に願います。願わくは城イラストの箱で。
また、はちまるステーションさんの八王子城もなかの陳列で目を引くのはポップです。
よく見てみると、なんと八王子城もなかは【人気No.1】の称号をいただいている、買うっきゃない! お土産になっているということを知るのです。
こりゃすごいことだ! と城もなかブームの到来か? このはちまるステーションさんでの販売が、八王子城もなかの人気爆発の起爆剤とならないかなぁと期待に胸膨らましてしまいました。
営業時間 10:00~21:00 / 定休日 不定(セレオ八王子休館日) / 電話 042-686-3114
八王子城への城攻め
高尾駅から八王子城登口まではバス等で行くのがベターなんでしょうが、徒歩でいきました。舗装道路ですが、なかなか傾斜がある道が続きます。
八王子城は、すでに何回か行ったことがありますし、テレビでもよく見る有名城なので、また来ましたーという感じでお邪魔しました。
立派な橋と段々の石垣、そして門が再現されている、御主殿。ここは綺麗な石垣石畳を味わうために欠かせない場所。行きか帰りに必ずいきます。
相変わらず、癒される。苔むした部分もいくつもあって萌えます。
この日はなかなかの寒さがあったので、御主殿では至るところに霜柱が。
次は、本丸を目指しひたすら登る。
ちょうど良い、トレッキングやハイキングの場所だと思います。
小高く小さな本丸のほか、八王子神社や天狗の像、小宮曲輪、松木曲輪と見たら、次はいよいよ大天主(詰城跡)へ!
本丸から富士見台方向へ向かう。
八王子城の案内板でも、書いてあるのとないのがある、また端っこの方に書かれているマニアックポイントですが、その向こうに大きな堀切もあるし、富士見台まで行けば、天気が良ければ、ひょっこり富士山もちょっと見えます。
時間があればぜひ行っておきたいところ。
甲斐上野城の城もなか
「雪の椿城」(瓦屋)
雪の椿城は、甲斐上野城の城もなかで、甲斐上野城が「椿城」と呼ばれたことから雪の椿城というネーミング。
ふつうなら「〇〇城もなか」と名付けたくなるところを、あえて「雪の椿城」と生菓子のような名前でカッコいい!!
雪がついているのは、なぜなのか……。
椿がより美しく輝くシーズンの冬を暗示しているのか? 椿と言ったら確かに寒い季節、むしろ雪の中で咲いているイメージがある。椿と冬、雪は相性が良い。
それともあんが白あんであることから、白あんを雪に見立てているのだろうか。そのあたりの経緯を聞いてくれば良かったなーと少し後悔していますw
どなたか行かれることがあったら聞いてみて教えてください〜。
皮は、いわゆる定番の三層角右寄り型。ここまで城もなかの皮を担う、この型すごいよなー。
もういくつこのタイプの皮で城もなかが存在しているのかもわからないほどの普及率!
おそらく天守や櫓がこんな風にあったかどうかは、わからないけど(たぶんなかっただろう)。
まぁお城の跡を偲ぶために具体的に物として作った物、城跡を意識するための産物、憧れやイメージの偶像化ともいうのか。イラストとかでも城をすぐ天守や櫓に結びつけていることはあり、城もなかに限ったことではないけれど、城=天守や櫓という誤解を生みやすいのかなと。
説明はいるけど、逆にこの城もなかを通じてそこら辺も伝わっていけばいいんだけど……。
さて、最近見始めた型の緻密さ(皮の細部がシャープに細かいかどうか)でいうと、屋根の溝はしっかり見えるものの、破風や窓か狭間の輪郭はぼんやりしていて、粗密の中間的にも感じる。
あんは、白あん。
粒あんタイプはない、白あん一択だ。しっとりなめらか。
先ほども書いたけど、白あんを雪に見立ててこの「雪の椿城」というネーミングでは? と推察しているところ。もなかだからしょうがないけど、城の中に雪が詰まってるという感じかw
雪の椿城があるなら、桜あんを詰めて「桜の椿城」、抹茶あんを詰めて「茶の椿城」なんてのもいいんじゃないか?
定番の粒あんを詰めたらなんだろう……「小豆の椿城」?
なんか風景まで浮かばせてくれる名前を持って作ることはできない。なかなか簡単には行かないな。
あらためて「雪の椿城」のネーミングが、情景を思い起こさせ、他にはなかなかない類稀なものだと気づくことができた。やっぱりカッコいい、この名前!
買ったところは、瓦屋さんです。
無添加にこだわり、季節の感動を伝えたいと、その日の朝に心を込めてお菓子を作っておられるとのこと。
その心が「雪の椿城」の雪に込められているのかも! となんだか少し納得できる部分もある。
気さくな店員さんが複数おられて、話も色々できました。
パッケージは「雪の椿城」ですが、店頭のショーウィンドウでは「椿城最中」とダイレクトな表記となっています。
賞味期限は6日のようです。
甲斐上野城(椿城)からは、徒歩で50分ほど。
城の近くの東西に走る県道県民の公園森線をひたすら東に進み、県道42号線との交差点から42号線を北上。滝沢川を渡ったら直進し右手にあります。
なかなか距離があります。
お店の前には駐車スペースもあるので車の方はぜひお立ち寄りください。
営業時間 9:00~17:00 / 定休日 月 / 電話 055-284-2100
甲斐上野城への城攻め
甲斐上野城(椿城)は、五輪塔群のある本丸跡と城跡にある本重寺、大井氏一族のお墓がある程度ですが、町の指定史跡として、大切に地域の方に守られていることがわかります。
椿城跡の石碑や案内板があるのがありがたい。
何よりこの城跡への愛を感じたのは、地元小学生の手づくり案内板。
味があるし、「ぜひ見ていってください!!」って言われたら行くっきゃないっしょ!
……って最初から見にきたわけなんだけど、なんかほっこりします。
授業とはいえ、見ていってほしいって言う純粋な気持ちが伝わってきました。
痛み具合からして、風雨雪にさらされ耐え抜いてきたのだろう。平成20年度の6年生の制作のようで、もう15年も経つ。これを作った子たちは今頃何をしているのだろう。この案内板を作ったこと覚えてくれているのだろうか。
地元にいるのか、県外に行っているのか、いずれの場合であっても、この案内板をきっかけに甲斐上野城にまた訪れて誇りを感じていてほしいと願うばかりです。
さらにこの看板があり、五輪塔群の本丸跡に向かう道は、住宅の脇道。そんなに人は来ないかもですが、家の周りを見知らぬ人が通っていく環境となっているから、このお宅の理解があってこそ本丸跡に行けるんだろうな。
このお宅の方に、感謝感謝でした。
こういう場所は城をめぐっていると結構あるような。城跡の近くでなくても、城跡へ向かう道として、住宅地の脇道みたいなところを通ったり、住宅の裏手を通るようになってたり。
そのお宅の方が、城好きさんであれば話は早いのですが、地域の住民の方々のご理解がなければ城跡に行けないということを改めて感じた場所でした。
城めぐりは、城跡整備してくれる人や案内板、説明パンフ、縄張図など作って広めてくれる人だけでなく、城跡までの道を守るというのか、生活してくれている人のおかげで楽しめるんやなぁと天を仰いで感謝の気持ちを打ち上げました。
皆さんありがとう。
おわりに
今回は、東京の西側から山梨へと城もなかに出会う旅路を歩んできました。
都内では八王子城という名城の圧巻巨大なこだわりの城もなか。地域に愛され、シャレオツなネーミングセンスが光る季節を感じる城もなか。
今回も珠玉の城もなかが、まだまだある! と改めて感じるものとなりました。
城もなかの生まれには、単純なもなかにしなかったこだわり、もなかの皮をあえて城型にした、そこに城や地域や歴史への何かしらの想いがある気がしています。
そのこだわりや想いが、これからも衰えることなく、続いていってほしい!
お菓子業界も材料費高騰などで厳しく、皮の仕入れが困難で一時販売休止となった城もなかも出てきており、まだまだ城もなかの戦国時代は続きそうですが、また美味しい城もなかを食べに行けることを楽しみにしています。
これからも愛すべき城もなかを求めて、そして懐かしい再会と新しい出会いの城もなかと城めぐりを介してビッビッビッと探究心や好奇心に電気ショックを与えて活性化させながら、城の堪能方法の追及に励みたいと思います。
みなさんも、東京から日帰り可能な西関東の城もなかを、ぜひご堪能くださいませ!
ご覧になった皆様が、城もなかを通じて、城が地域で愛されていることや、角度の違った城めぐりの新世界が広がればと思っております。
それでは、
城めぐりのおともに「城もなか」を!
よき「城もなか」との出会いがありますことを祈っています。
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