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【日本最初の星形城郭・戸切地陣屋の再評価】5.おわりに

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というわけで読み応えのある連載も今回で最終回です。戸切地陣屋を訪問したことのある方も、まだない方も非常に興味をそそられる内容だったのではないでしょうか。
西洋式の城郭を日本の城の常識で測ること自体がナンセンスで、今回あらためてヨーロッパにおける築城術の歴史や系譜を知ることができたのは有意義でした。ぼくも早く自分の目で戸切地陣屋を見てみたいです!

冒頭でもお話したとおり、戸切地陣屋の知名度は極めて低く、またその本質も百数十年にわたり解き明かされることはありませんでした。
しかしここ5ヶ年の調査研究により、この城が、洋式軍学の定理・理論を柔軟に理解かつ咀嚼しかつ当時世界の軍事の前提となりつつあった砲戦による火制範囲を組み込んだ「優位先奪」「陣前減滅」を可能とする防衛構造を本邦で初めて実現し、かつ拠点としてヴォーバン以来の稜堡式星形堡塁を備えた、文字通りの「日本最初の星の城」であったことが判明しつつあります。

これらについては、いまだ調査研究の余地があります。
今後も、その真価を探るためのアプローチを続け、その成果を皆様に紹介していければ幸いです。
また、これらの調査研究の中で見出した視座が、今後ほかの「日本における星形城郭」に対する、従前の先入観にとらわれない新たなアプローチのきっかけになればと願っています。

戸切地陣屋関連 参考文献リスト

Decker, Karl von 1833 "Die Taktik der drei Waffen"
 同上邦訳・訳者不詳『垤氏三兵答古知幾』
Engelberts, J.M. 1839 "Proeve eener verhandeling over de kustverdediging"
 同上邦訳・昌平坂学問書所蔵本『防海試説』
  ※邦訳本については国立公文書館のデジタルアーカイブに拠った。
Kerkwijk, G.A. van 1843 "Handleiding tot de versterkingskunst, voor de kadetten van alle wapenen"
Leclerc, (captain) 1806 "Cours élémentaire de fortification"
Marolois, Samuel 1627 "Fortificatie, dat is sterckte bouwing" 
Merkes, Johannes Gerrit Willem 1825 "Inleiding tot de beoefening der vesting-bouwkunde"
Merkes, Johannes Gerrit Willem 1834 "Bijdrage tot de kennis der versterkings-kunst"
Pagan, Blaise François 1645 "Les fortifications du comte de Pagan"
Pel, C.M.H. 1849 "Handleiding tot de kennis der versterkings-kunst, ter dienste van onder-officieren" 
同上 大鳥 圭介訳1864『築城典刑』
Perry, Matthew C. 1856“Narrative of the Expedition of an American Squadron to the China Seas and Japan, Performed in the Years 1852, 1853, and 1854”
Perry, Matthew C. 1868 "The Japan Expedition 1852-1854"
 ※同書の金井圓による邦訳『ペリー日本遠征日記』(1985)を参照した。
Savart, Nicolas 1835 "Cours élémentaire de fortification"
同上 Nanning, Frederik Petrus Gisius訳 1836 "Beginselen der versterkingskunst"
同上 矢田部卿雲訳1853『警備術原』
Straith, Hector 1848 "Treatise on Fortification and Artillery" 
同上 吉澤勇四郎訳1865『英国斯氏築城典刑』
Vauban, Sébastien Le Prestre de 1691 "Nouveau traite de geometrie et fortification”
同上 英訳本 "The New Method of Fortification" 
 ※英訳本についてはAbell Swall出版本(1693)およびS.&E. Ballard出版本第5版(1748)を参照
 同上 旗代太田訳『【試訳】伝ヴォーバン式 築城教本 英訳版(1691)』「私家版 近世欧州軍事史備忘録」巻5(2022)
Williams, Samuel Wells 1853-1854 "A Journal of the Perry Expedition to Japan"
赤松則陽(柔三郎)/ 1806『海防辨』 
秋葉  実/編1989『北方史史料集成』第二巻
 ※『加賀家文書』について、同書の翻刻に拠って参照した。
池田 哲郎1959「佐久間象山と蘭学-象山蘭書志-」『福島大学学芸学部論集』第10号
市川 一学1850『御城地之儀ニ付存寄申上候書付』
※北海道大学附属図書館北方資料室所蔵本のデジタルアーカイブに拠った。
江川 英龍『砲術門人姓名簿』国文学研究資料館 伊豆韮山江川家文書データベース公開資料
江差町史編集室1979『江差町史』資料編第三巻
※『松前藩御達留』について、同書所収の翻刻を基準とし、北海道大学附属図書館北方資料室デジタルアーカイブ公開の同性質資料との照合を行いつつ参照した。また、『藤枝日記』は同書所収の翻刻に拠った。
江差町史編集室1980『江差町史』資料編第四巻
※『慶応二年御役人幷諸向勤名前扣帳』について、同書所収の翻刻に拠って参照した。
大鳥 圭介・今井 信郎1998『南柯紀行・北国戦争概略衝鉾隊之記』新人物往来社
※『南柯紀行』『蝦夷之夢』について、同書所収の翻刻に拠って参照した。
尾山 徹三1870『庚午弾劾録』
 ※北海道大学附属図書館北方資料室所蔵本のデジタルアーカイブ公開の資料を基準とし、『松前町史』史料編第一巻所収の翻刻との比較参照を行った。
上磯町教育委員会2000『史跡松前藩戸切地陣屋跡 環境整備事業報告書』
上磯町史編さん審議会1997『上磯町史』
河内 八郎/編 1993『徳川斉昭・伊達宗城往復書翰集』
神田芳太郎1892『松前氏の起因ト其文学』
※北海道大学附属図書館北方資料室所蔵本のデジタルアーカイブに拠った。
河野 常吉1918『北海道史人名字彙』(1979北海道出版企画センターによる復刻本を参照)
河野 常吉1924『北海道史蹟名勝天然記念物調査報告書』(1974名著出版による復刻本を参照)
木村 重直/編1859『戸切地御陣家勤中御達書留』
釧路市/編 1974『新釧路市史』
工藤茂五郎 1854『亜墨利加一件届』
久保  泰2021『松前藩家臣名簿』
小宮山昌秀 1816-1817『楓軒年録』
近藤 重蔵1807『惣蝦夷地御要害之儀ニ付心付候趣申上候書付』
 ※早稲田大学図書館蔵『蝦夷地実記』所収。同館公開のデジタルアーカイブに拠った。
坂本 保富1996「下曽根信敦の西洋砲術門人の析出-高知市民図書館蔵「徳弘家資料」を中心として-」『日本歴史』第582号
坂本 安富2011「佐久間象山の洋学研究とその教育的展開:幕末期における軍事科学を媒介とした洋学の普及現象」『教職研究』第4号 信州大学全学教育機構・信州大学教職支援センター
佐久間象山1850-『及門録』京都大学所蔵、京都大学貴重資料デジタルアーカイブ公開資料
佐久間象山1913『象山全集』尚文館
佐藤  真/編1940『維新前件名別北海道略年譜稿』
昌平坂学問所 1846-1865『昌平黌書生寮姓名録』大阪大学附属図書館蔵
 ※国文学研究資料館・新日本古典籍総合データベースのデジタルアーカイブに拠った。
白山 友正 1966「箱館五稜郭築城史 : 五稜郭フランス式築城論並に築城考証年表」『北海道経済史研究所研究叢書』第40編
新人物往来社/編 1995『新選組史料集』新人物往来社
 ※『中島登覚え書き』については同書の翻刻に拠った。
鈴木 重正 1855『砲術必用 量地筭法』東北大学附属図書館蔵
 ※国文学研究資料館・新日本古典籍総合データベースのデジタルアーカイブに拠った。
須藤 隆仙/編1996『箱館戦争史料集』新人物往来社
 ※『北洲新話』『蝦夷錦』『峠下ヨリ戦争之記』については同書の翻刻に拠って参照した。
手島季隆 1857 『探箱録』
※『土佐群書集成』第39巻(高知市立市民図書館1977)の翻刻に拠った。
滴々斎塾 1845-1864『適々斎塾姓名録』
 ※国文学研究資料館・新日本古典籍総合データベースのデジタルアーカイブに拠った。
飛内家旧蔵書写『飛内家文書』
※北海道大学附属図書館北方資料室所蔵本のデジタルアーカイブに拠った。
富村  登1966『山田三川』富村登遺稿出版後援会
仲田 正之1972「江川英龍の砲術教授と佐久間象山」『駒沢史学』第19号 
長野市教育委員会2015『真田宝物館収蔵品目録 近山家旧蔵佐久間象山関係資料』長野市教育委員会文化財課
中村 正勝/編著2016『種田家文書』北海道出版企画センター
箱館区役所/編 1911『函館區史』(1973名著出版による復刻本を参照)
濱口 裕介 2022『「星の城」が見た150年: 誰も知らない五稜郭』現代書館
深瀬 春一 1925「戸切地の松前陣屋考」『歴史地理』第66号
藤原 正蔵 1813『亜魯西亜書翰』国立公文書館蔵
藤原 正蔵 1817『尾薩漂民私記草稿』同志社大学附属図書館蔵
松前町史編集室1977『松前町史』史料編第一巻
松前町史編集室1990~1996『松前藩と松前』第32~37号
※『北門史綱』について、上記2種の文献に所収の翻刻に拠って参照した。また、『松前家記』『蝦夷錦血潮之曙』については『松前町史』史料編第一巻の翻刻に拠って参照した。
松前町史編集室1977『松前町史』史料編第二巻
※『湯浅此治日記』『和田家諸用記録』『松前町年寄詰所日記幷番日記』『法源寺公宗用記録』について、同書所収の翻刻に拠って参照した。
松前町史編集室1988『松前町史』通史編第一巻下
松前 広長1781『松前志』
※北海道大学附属図書館北方資料室所蔵本のデジタルアーカイブに拠った。
松本  隆/編1958『近世渡島地方誌』
矢嶋 松軒/編1915『江戸時代落書類聚』第一巻~第三十六巻
矢嶋 松軒/編1915『江戸時代落書類聚残編』第一巻~第五巻
山田 三川 1784- 『三川雑記』
 ※富村登による翻刻・校訂(1972・吉川弘文館)に拠って参照した。
陸軍築城部本部/編 1900『日本城郭史資料』第1冊
渡辺  慎 1831『伊能東河先生流量地傳習録』九州大学中央図書館蔵
 ※国文学研究資料館・新日本古典籍総合データベースのデジタルアーカイブに拠った。
(筆者不詳)『安政松前奥羽旅日記』1859 函館中央図書館蔵
(筆者不詳)『蝦夷日記』1856-1857? 筑波大学附属図書館蔵
 ※国文学研究資料館・新日本古典籍総合データベースのデジタルアーカイブに拠った。
(筆者不詳)「箱館在所東山越内西知内迄粗絵図」『福島屋文書』函館中央図書館蔵
(筆者不詳) 『蕃書調所書籍目録寫』1856-1862? 国立国会図書館蔵
(筆者不詳)『松前藩ニテ築造旧台場跡調』1879-1881函館中央図書館蔵
(筆者不詳)『松前藩藩士名簿』1822-1823? 函館中央図書館蔵

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