前編、中編では、山城の痕跡としての曲輪、横堀、竪堀、堀切、土塁、切岸について解説しました。これだけ頭に入っていればもう山城に行くしかありません。でも山城に行くときの準備はとても大事です。後編ではその準備など基本のキについて見ていきましょう。さぁ、山城は目前です!
この記事は前編・中編・後編の3本立ての後編です。
山城にいつ行くか
もう山城に行きたくなったあなた。すぐにでも行きたいところですが、ちょっと待った!
いつ行くかはとても大切なポイントです。次項の準備編も含めてしっかりと計画してから行くようにしましょう。
では、いつ行くのが良いのか。著者のおススメは春と秋です。
もう少し詳しく言うと、春は山に雪がなくなった後から暑くなってきたころまで。秋は夏の暑さが落ち着いたころから雪が降る直前まで。
もちろん理由があります。冬は雪が降る地域は、晴れていても山には雪が積もっていることがあり、大変危険です。雪が降らない地域でも凍結や霜が降りていたら、転倒の危険があります。そういう理由で冬はあまりおススメしません。
また、夏は虫(蚊、アブ、ハチ、ヒルなど)が沢山出ます。特にスズメバチやヒルは危険極まりないので要注意です。さらに草花や木々が旺盛ですので、道が険しくなったり視界が悪くなったりします。それに熱中症の危険がありますので、夏はあまりおススメしません。
ということで、おススメは春または秋です。
ただし、春は大型、小型に問わず動物の活動が活発になりますし、虫もでてきますのでご注意を。
秋は落ち葉が増えて道が滑りやすくなりますし、日が暮れるのも早くなります。そして意外と盲点なのが入山禁止になることがあることです。松茸が取れる山などは季節によって入山禁止になる場合があります。必ず事前にご確認ください。
さらに、季節に関係なく私有地のところは勝手に入ってはいけません。公有地も許可が必要な場合や、立ち入り禁止の場所などあります。事前に確認や許可を取るなど準備をして楽しく山城めぐりしましょう。
山城を楽しむ 準備しよう!
ここでは、山城に行く前に準備しておくべきモノやコトを紹介します。山城に行くときの参考にしてください。
1.調べよう
駐車場
車で行く場合は近くに駐車場があるか、必ず確認しておきましょう。
山城によっては駐車場がないところもあります。路上駐車やご近所の土地に無断で停めたりしないでくださいね。
鉄道、バス 駅、バス停、時刻表
公共交通機関を利用する場合は、駅やバス停がどこにあるのか、歩いて何分ぐらいなのかということも調べておきましょう。
時刻表も確認しておくと良いです。場所によっては1時間に1本ぐらいしかない場合もありますので。
コンビニ、飲食店
近くにコンビニや飲食店があるかどうかも要チェックです。事前にコンビニなどで必要なものを購入しておくと良いでしょう。
トイレ
山の中にはトイレなどは基本的にありません。山に入る前に済ませておきましょう。
周辺地図
周辺の地図は持っていくほうが良いです。もし万が一迷ってしまったり、違うところに降りてきてしまったときなどのために。また、周辺の観光にも便利です。
2.揃えよう
縄張図
先ほどから縄張図という用語が何度も出てきていますが、これはあったほうが絶対に良いです。
縄張図とは城の構造を示した図面です。現在の状態から曲輪や防御設備の配置や広さ・大きさなどを読み取って作成したもので、多くの研究者たちの研究成果の一つと言えます。
これはパンフレットなどにも載せてあることがありますが、現地に行ってパンフレットがないとか、パンフレットには載ってなかったなんてことにならないように、事前に用意しておきましょう。
縄張図は、本や雑誌などに載っていることもありますが、一番いいのは図書館です。各自治体の図書館に行くと中世城館や山城などの調査報告書などがありますので、それをコピーしておくと良いでしょう。コピーが出来るかなどは図書館によって異なると思いますので、受付で確認してください。
縄張図は見慣れないと難しいかもしれませんが、まずは持って出かけてにらめっこするので良いと思います。いくつかの山城に行けば、すぐに見慣れると思います。
パンフレット
パンフレットは現地では手に入らないと思っていたほうが良いです。なので、駅や観光案内所、郷土資料館などに立ち寄って入手しましょう。できれば前日までに入手できると良いですね。最近ではウェブ上に公開していたり、依頼すれば郵送で取り寄せできることもありますので、観光協会や教育委員会のサイトをチェックしてみてください。
山城を楽しむ 装備を整えよう!
何度も言いますが、山城は城と言っても山です。これを読んでいるあなたは大丈夫だと思いますが、たかが山、されど山です。
天気が急に変わるかもしれないし、予定よりも遅くなって暗くなってしまうかもしれません。途中で足が痛くなったり、くじいたりするかもしれません。備えあれば憂えなし。しっかりと準備をしておきましょう。
以下を参考に、装備を整えてから山に入りましょう。
1.服装
- 長袖、長ズボン
- 日焼けや虫刺され防止のため。また、木の枝などが当たったりするのでケガの防止にもなります。
- 長めの靴下
- できるだけ長い靴下をおススメします。
- 帽子
- 日焼け防止のため。
- 登山用の靴、またはスニーカー
- ご自分の足に合った、歩きやすい靴、疲れにくい靴を選びましょう。
- 軍手、または手袋
- 手も守っておきましょう。
2.持ち物
- リュック
- できるだけ両手は空けておきましょう。
- ステッキ
- トレッキングポールがあればベスト。普通の杖でもOKです。
- 水分
- 重いですが、がんばって多めに持っていきましょう。
- 軽食
- おなかが空いたら食べられるように。ただ、私有地の場合が多いので事前に確認しておきましょう。あまりおなか一杯になるといけませんので軽めに。
- 甘いもの
- チョコやアメはカバンに忍ばせておきましょう。
- 携帯ラジオ
- 何かあった時のために。
- 雨具
- カッパやポンチョがオススメ。
- 鈴
- 熊、猿、イノシシなど動物がいるかもしれないので、鈴は持っていきましょう。
- ライト
- 暗いところはライトをつけて。
- タオル、ウェットティッシュ、ティッシュ
- ビニール袋
- 虫よけ
- スプレーやシート、携帯用の蚊取り線香など。
- 虫刺されの薬
- 虫に刺されやすい人は必須です。
- 絆創膏
- ケガした時のために。
- 方位磁石
- マップ、縄張図
- スマートフォン、タブレット
- 電波が届かない可能性があるので注意してください。
- 時計
3.注意事項
装備がやたらと多いように感じるかもしれません。
比高が低いといっても山は山です。できるだけ装備を持って出かけてください。何かあってからでは遅いのです。何もなかったら笑って帰るだけです。やりすぎぐらいがちょうどいいと思って、参考にしてください。
その他の注意事項は下記のとおりです。
- 山城に行く時期を見極めましょう
- 現地案内板に縄張図があったら写真を撮っておきましょう
- 両手はできるだけ空けておきましょう
- 坂道は横歩きで
- 山道は走らない
- 無理は絶対NG
- 過信はもっとNG
- 早めに入って、早めに出てくるようにしましょう
- 私有地の場合が多いので騒がない
- ゴミは必ず持ち帰る
- スマートフォンなどつながらない場合があるので要注意
- 遭難するかもしれないと、万が一のリスクを想定してください
まとめ 〜だから山城はやめられない〜
さて、前・中・後編の3本立てで長々と書いていきましたがエンディングです。初心者の方に読んでほしい記事としてまとめました。最後まで読んでいただけたようでありがとうございました。
時代背景や防御設備、縄張りについても色々と書こうと思ったのですが、頭でっかちになってもいけませんからまずは山城に行ってみたいな、こういうところを見ればいいんだな、というのを感じていただけるように話を絞りました。
最後に笑い話をひとつ。とある山城へ行った時のこと。山城と言っても整備してある城ですからふらっと立ち寄る方もいるみたいで。
筆者は記事にあるような服装や装備を持って上がっていき、ひとしきり見て満足げに下りてきたところ、ちょうど若い男女が上がってくるではありませんか。男性の方は半袖半ズボンにサンダル、女性の方もスカートにちょっと高めのヒール。こっちはトレッキングシューズにステッキ2本とリュックを背負ってます。
男女はこちらを見て「え? そんな恰好で?」という顔。こちらは男女を見て「え? そんな恰好で?」という顔。すれ違う時にお互いクスッと笑ってしまいましたが、そのあとちゃんと登って降りられたのだろうかと心配になりました。
当然ですが道は土ですし、石がゴツゴツしています。あのヒールで登れたのか? 途中でやめて帰ってきたのか? 虫に刺されなかったかなぁとか。
私の方はケガも虫刺されもなく、城の痕跡を沢山見れたし写真も撮りまくったしで満足して汗をぬぐい、楽な格好で帰りました。備えあれば憂えなし。山城を満喫したお話でした。
また違う山城に行って新しい発見、築城者との知恵比べ、帰った後の美味しいビール。たまりませんね。さぁ、あなたも。山城へ行こう!
動画を公開しました
たかまる。さんに山城のおもしろさを教えていただくインタビュー動画を攻城団テレビで公開しました。ぜひご視聴ください!