山城は全国各地にあるものの、その難易度はさまざまですし、初心者がひとりで出かけるのは危険です。なにより「どこを見ればいいかわからない」「山城の楽しみ方を教えてほしい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はたかまる。さんにお願いして、初心者が山城を訪問するためのガイドとなるようなコラムを書いていただきました。これを読めばきっと山城を楽しんでいただけるはずです!
どこを見たら、どこに行ったら、どうすれば山城を楽しめるのか。すぐに答えを教えてくれ! そんなあなたには、残念ながらこの記事はお役に立てないかもしれません。
なぜなら、「ここだけは行っておきたい山城ベスト10」とかいう記事ではなく、山城って何か? 城の痕跡って何なのか? どこをどう見ればよいのか? そんなことを順番にお話しする記事だからです。
山城にあまり行ったことがない初心者の方に、ここを見ておくといいよ、こういうところがポイントだよ、というのをお伝えします。
山城は自然の地形と人間の技術が織り交ぜられた場所。是非この記事を最後まで読んで、山城に行きましょう!
(この記事は前編・中編・後編の3本立ての前編です)
山城を楽しむ さぁ、現地だ!
![登城口[根本城]](https://img.kojodan.com/photo/290708.jpg)
あなたは、とある山城の登り口に立っています。
「さぁ、山城を楽しんでください!」と言われたらどうしますか? きっと、どうしていいか分からないのではないでしょうか。だって、その山城はどういう名前なのか? どういう城なのか? 何かあるのか? それともないのか? そんなことを思うはずです。
しかも目の前にはただの山。ここが城ってほんと? そう思っても仕方ありません。だって、ほんと山だもん。
だけど、そのただの山は、昔(古代か、中世か、近世か)の人が何かしら手を加え、「城」として使っていたところなのです。自然の山に手を加え、人工的な何かを作り、軍事施設(または行政施設)にしていたところ。それが山城なのです。
だから山城を楽しむというのは、そこに作られた人工的な何かを探し、体感することだと考えてみましょう。
そうしたら、現地に行って、何かを探さなければいけませんね。じゃぁ、何を探すのか。何を作っていたのか。それを事前に調べておく必要があります。
お城用語「山城(やまじろ)」
山の地形を利用して作られた城。土でできた防御施設で、天守などの高層建築物を伴わない。石垣はあまり使っていないが、多用している山城もある。ところで、なぜ山城に行こうと思うのですか?
![南曲輪大堀切[岩村城]](https://img.kojodan.com/photo/243377.jpg)
この記事をここまで読んでくれたあなたは、きっと山城についてウェブでいろいろと調べてこのページにたどり着いたのでしょう。そうだとしたら、あなたは山城に行こうと思っている人ですね。
では、あなたはなぜ山城に行こうと思うのですか?
こう尋ねられたら、あなたはなんて答えますか? 筆者はこう答えます。「山城を作った人との知恵比べをしに」。え? と思う方もいれば、うんうんとうなずく方もいるでしょう。山城は防御施設です。山城が作られた時期は各地で合戦が頻発していたころですので、敵に攻められたときのことを想定して作られています。
だから、作った人は守る人、登る自分は攻める人となるわけです。そして、作った人はいろいろと工夫して攻めあがってこられないようにしているはずです。だから、その罠を見抜いて、かいくぐって、主郭を目指す。まさに知恵比べです。
そのためにも、城の痕跡を見つけることがとても大事になってきます。城の痕跡を見つけられなければ、ただの登山。それでは山城に行ったとは言えないです。行ったという事実が残るのみ。それでは楽しくないですよね。
山城に行くには、少しだけ予備知識が必要です。でもむずかしく考えなくて大丈夫。ほんの少しだけ知識として頭に入れておくだけです。
現地に行ったとき、「あ、これ、堀かも」「あ、これは土塁かも」「この斜面やたらと急やなぁ、切岸か?」そんな程度で充分です。
では、そのちょっとした予備知識を次の項で見ていきましょう。
城の痕跡を見つけるための予備知識
1.平たんな所 = 曲輪かも
![本丸跡[美濃金山城]](https://img.kojodan.com/photo/383219.jpg)
山城といっても基本的には山です。自然が作り出した地形です。
その中で、なんとなく不自然に平らな所があったら要注意です。そこは山城の痕跡の一つ、曲輪(くるわ)かもしれません。
曲輪とは、ある一定の平たんになったところです。城は曲輪があって初めて城と言えます。
ある一定のサイズの平たんなところを作って、その周りを堀や柵や塀などで囲ったところが城と定義されます。曲輪がない城はありません。
だから、山城に行ったら平たんなところを探しましょう。
平たんなところを見つけたら、縄張図やパンフレット、現地案内板と照らし合わせて、今いるところが本当に曲輪なのかを確認しましょう。そこが○○曲輪とか、○○郭などと書かれていたら曲輪です。城の痕跡、発見です。
お城用語「曲輪(くるわ)」
地面を削ったり盛り上げたりして平たんにしたある一区画のことを曲輪という。お城の基本となるところ。2.くぼんだ所 = 堀かも
![西曲輪(左)北側の堀と土塁[古宮城]](https://img.kojodan.com/photo/321752.jpg)
山城は山なのでゴツゴツしていたり、アップダウンがあったりします。
でもちょっと待ってください。そのアップダウン、本当に自然にできたものでしょうか? もしかしたら人の手が加わっているかもしれません。くぼんでいるところは要チェックです。
特に、斜面に対して横方向(等高線と平行)につながっていたら、それは横堀(よこぼり)かもしれません。逆に、斜面に沿って(等高線に垂直に)くぼんでいたら、それは竪堀(たてぼり)かもしれません。
下を向いて歩いていては見つけられませんので、所々立ち止まって左右を見渡してみましょう。どこかくぼんでいるところはありませんか?
そして、くぼんでいるところを見つけたら、縄張図やパンフレット、現地案内板と照らし合わせましょう。
その場所に案内板でもあればわかりやすいですが、無いところが多いので要注意です。自分だけの大発見ということにしておいても良いですが、パンフレットなどには主要な堀などは書かれていることがありますので、参考にしてみてください。
堀を見つけたら、これまた城の痕跡、発見です。
横堀(よこぼり)は、斜面に対して横方向に設けられた防御設備です。斜面を登ろうとする敵の進路を妨害します。
山城にある堀は基本的には空堀、つまり水のない堀です。掘っても水が湧き出てくるわけではないですし、どこかから水を引いてくるのも大変です。水がなくてもある程度の深さがあれば充分、進軍を食い止めることができます。
竪堀(たてぼり)は、敵が斜面を登ってきたとき横方向への移動ができなくなるような防御設備です。竪堀の両側は高くなっていますので、横へ移動するのは大変です。
しかも上からは弓矢や投石がありますので、斜面から転げ落ちてしまいます。あなたも気をつけてくださいね。
![竪堀[明知城]](https://img.kojodan.com/photo/246393.jpg)
そしてもうひとつ。尾根筋を歩く(もしくは見てみる)と急にくぼんでいるところがあるかもしれません。
もしかしたらそこを人工的に削ったのかもしれないです。それは堀切(ほりきり)です。敵は山に登るときに尾根伝いに侵入してくることが多いです。それを防ぐために尾根を途中で分断します。
それが堀切です。これも敵の侵入を阻むための防御設備なのです。
![大堀切[鶴ヶ城]](https://img.kojodan.com/photo/276516.jpg)
お城用語「横堀(よこぼり)」
山の斜面に対して横方向に設けられた堀のことで、人工的に作られた防御設備。敵の山や曲輪への侵入、縦方向への移動を阻止する。曲輪や城域をぐるりと囲むように作られる。お城用語「竪堀(たてぼり)」
山の斜面に対して平行して設けられた堀のことで、人工的に作られた防御設備。敵の斜面での横移動を阻止する。山麓からの敵の侵入経路にもなるが、山頂や山腹からは効率良く攻撃することができる。お城用語「堀切(ほりきり)」
尾根を断ち切るように掘られた空堀。敵の尾根伝いの侵入を阻止する。尾根を自然地形のままにしておくと敵が簡単に侵入できてしまうため、尾根筋を分断する。堀を掘って出た土を横に盛り上げれば、堀と同時に土塁も作ることができる。堀を見つけたら土塁もないか探してみよう。
山城の構造は複雑ですが、イメージしやすいように主要な構造だけのイメージ図を載せました。
地形を生かしながら、防御設備として人の手によって作りこまれている痕跡を探してみよう。
前編はここまで。山城で何を見ればよいのか、そして、予備知識としての曲輪、横堀、竪堀、堀切についてまとめました。次回は土塁や切岸について続けていきますね。