たとえば通帳の残高、たとえば体重の増減と、あるまとまった記録の推移を見るのは楽しいことです。
あるいは晴れ男、雨男のようにイベントと天気の関係性をついつい印象づけて語ってしまう傾向がぼくらにはあります(それが科学的ではないものであれ、会話の肴としては重宝されます)。
ぼくがインターネットサービスに求めるものは大きくふたつあって、ひとつは安全であること、そしてもうひとつは便利であることです。
攻城団をつくろうと思ったときにもこの二点はかなり重要視してきました。余談ではありますが、この規模のサイトで管理者が毎日写真やコメントなどの投稿をすべてチェックしているのは珍しいと思います。でもそれはネットに慣れていない初心者にとって居心地のいい空間を守るためには必要なことだと考えています。
ただし今日は安全性の話は横に置いて、便利さについてのお話です。
なにを便利にするのか
そもそも攻城団をつくるきっかけになったのは「日本100名城のスタンプ帳では訪問履歴を管理できない」ことを知ったからです。
「お城めぐりを趣味にしよう」と友人たちと旅行した際に、はじめて「日本100名城」のことを知り、また犬山城を訪問した際に事務所に余ってたスタンプ帳をいただいたのですが、すぐにこれだとライフワークとして死ぬまで趣味を楽しむには不十分だということがわかりました。
すべてのお城を訪問するのは無理だとしても、さすがに100では足りないだろうし、なにより「日本100名城」に選ばれていなくても見応えのあるお城もたくさんありますからね(その後「続日本100名城」が追加されました)。
つまり攻城団はスタンプ帳の代わりとしてつくったサービスです。
ぼくらが全国のお城で配布しているチラシでも「お城めぐりの記録、今日からはじめませんか」と大きく書いてありますが、記録を簡単に残せて、あとで見返せることがサービスの根幹です。
記録を残すことについては、昔の記録も残せるようにGPSなどのチェックをあえてはずしました。またあくまでも自分の訪問記録を管理することが目的だったので、クチコミ機能も当初はありませんでした。その後、リクエストが多かったので「未来の訪問者にメッセージを残す機能」として実装しました。
いつお城を訪問したのかを簡単に見返せるだけでなく、これまでいくつのお城を訪問してきたのか、そのお城には何回訪問したのかといった情報が当初から自動集計されていました。
この行ったか行ってないかというだけでなく、何回行ったかまで管理できるようにしたのはわりと英断だったと思います。
攻城団をはじめてから、いろんな人に話を聞く機会がありましたが、お城めぐりを長年趣味にされてきた方々の中にはExcelなどで自作の訪問記録帳をつくっていたという人も多くて、それが不要になったという喜びの声もたくさんいただきました。
(攻城団ではサービス開始時から自分の訪問履歴データをダウンロードできるようにしていますが、データをいつでも持ち出せる=独占しないという姿勢も評価されています)
ネットサービスならもっとできるなと気づいた
その後、多くのネットサービスと同じように、ぼくらも「より便利に」「より楽しく」なるよう、写真投稿やタイムラインなどいろんな機能を追加して、読み物コンテンツも充実させてきました。
すべては全国各地にあるお城の魅力を伝え、お城に行きたくなってもらうこと(=結果、攻城団が活用される)を目指したもので、それ自体はまちがってなかったと思います。じっさいこの数年で利用者も増えましたし、それでいて以前から攻城団を利用してくださっていた方からも支持されているので、正しい成長をつづけていると受け止めています。
ただ今回のコロナ禍で自粛がつづいている中で、自然と原点について考える時間が増えました。
ぼく自身もまだまだお城のことや日本史について勉強している途中で、だからこそ見聞きしたことは伝えたいし、まだ訪問したことのない魅力的なお城について大勢の人に広めていきたい気持ちが強いのは事実です。
だけどそもそもお城に出かけられない状況を前にして、ふと「訪問履歴を管理する」の一歩先について考えてみようと思ったのです。
それは「自分の訪問履歴を見返し、過去を振り返る楽しさ」の追求(あるいは演出)です。
ぼくらは「お城めぐりをライフワークに」と掲げているように、この趣味をずっとつづけてもらいたいし、またそれを支援していきたいと考えています。そして長く続けてもらいたいなら、長く続けたくなる、そうすることで楽しくなったり便利になったりする仕組みが必要だと考えました。
まずはExcelでできることは同じように自動集計してあげようと、年間の攻城数の推移を棒グラフで見れるようにしました。
さらに自分のお城めぐりの傾向を知るために、縄張り別(山城とか平城とかの比率)や、エリア別で集計して、これもグラフ化しました。
じつはまだいくつか自動集計のアイデアはあったのですが、とりあえずこれだけでも喜ばれるかなと思って公開したところ、「月別の数字も見たい」という感想がすぐに届きました。ですよねえ。
月別、曜日別は先送りにしたアイデアにあったので、すぐに追加しました。
そしてもうひとつ、めんどくさいから保留にしていたアイデアにも着手することにしました。
それが天気です。
攻城団ではお城めぐりの計画をたてる際の参考にしてもらおうと、2017年(平成29年)5月から天気のデータをお城ページに表示しています。「日曜日に行こうと思ってたけど雨予報だから土曜日に変更しよう」といった感じで、かなり便利に使っていただいているようです。
このデータを活かせれば、自分が訪問する日は晴れが多い、雨の割合は何パーセントといった情報が可視化できます。冒頭に書いたとおりなんら科学的根拠があるものではないですし、そもそも予報を見て行動を決めている以上、なんの相関関係もないのですが、天気をきっかけに過去の記憶がよみがえることもありますよね。
年間攻城数のように単純な集計結果だけであればExcelでも可能ですが、縄張りの種類、住所、天気をキーに集計しようとするとそう簡単ではありません。そもそもそれを希望する方が複数人いた場合、各自でデータを用意するのはあまりに非効率です。
攻城団にはすでにデータがありますし、せっかく日々メンテナンスをおこなっているのだから、それを使うのがベターだし、ぼくらは個人と社会の手間を軽減することがサービスの原則だと考えています。
お城めぐりをライフワークに
ぼくは趣味が長続きするためには
- 常に新鮮な刺激があること
- 仲間の存在を実感できること
- 手応えや達成感を味わえること
がポイントだと思っています。
もちろん攻城団もこれらを支援することを常に意識しています。
最初の「常に新鮮な刺激があること」はテレビや雑誌など攻城団以外の情報ソースもたくさんあるので、ぼくらはその隙間を埋めることを目的に「お城ニュース」をはじめました。これは全国的なニュースにはならないけど、お城好きなら知りたいだろうニッチな情報を取り上げています。御城印の発売情報などもそうですね。
ほかにもぼくの訪問レポートや、「マンガでわかる」シリーズなど、未知のお城を知るきっかけをつくったり、意外と知られていないお城の横顔を伝えようとしています。
またお城めぐりは一般的には孤独な趣味といわれますが、攻城団ではそうした孤独感を解消するために仲間の活動状況をタイムラインでチェックしたり、写真やコメントに「あっぱれ!」で反応できるようにしています。
あわせて全国にいる団員たちとじっさいに会って話せる場として、ガイドツアーや年に1回の団員総会を開催しています。去年からは高校生が使う日本史の教科書を読み直す勉強会を定期的に開催しており、先日ははじめてオンラインで開催しました。
そして最後が今回公開した過去の分析機能にもつながるのですが、お城めぐりをこれからも趣味にしつづけようと思えるような達成感があることです。
累計攻城数が増えていくこともそうだし、都道府県別の制覇率もそうです。オンライン版スタンプラリーであるバッジ機能も多くの利用者に楽しんでいただいています。
攻城団に参加して、お城の訪問記録を残していけば、自動的にお城めぐりの記録を可視化できます。
言い換えると、
- 常に新鮮な刺激があること(=これから訪問したいお城が増えること=未来)
- 仲間の存在を実感できること(=いまこの瞬間、充実していること=現在)
- 手応えや達成感を味わえること(=これまでの振り返りを楽しめること=過去)
というように現在・過去・未来のすべてにおいてお城めぐりを楽しんでもらおうと考えているのが攻城団です。
サービスを運営しているとついつい未来志向になるというか、規模を拡大するために新規性や話題性を追いかけてしまいがちです。
でもこれまでサービスを利用してくださった方を向いて、使えば使うほど便利になる、(訪問日の入力は必須ではありませんが)丁寧に記録を残された方がより恩恵を受けるような機能を拡充していくことも大事だと思います。
このように攻城団はみなさんがお城めぐりをライフワークとして楽しめるように、さまざまな方法でサポートいたします。
お城めぐりは数を競うものではありませんので、どうかご自身のペースで利用していただき、ゆっくり末永くご利用いただけますようお願いいたします。
そしてもしまだ登録されてない方がいらっしゃったら、今日から攻城団にお城めぐりの記録を残してみませんか。