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【歴代征夷大将軍総覧】鎌倉幕府2代・源頼家――父の権威を継承できなかった御曹司 1182年~1204年

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若さゆえに実権を奪われた御曹司

源頼朝の長男として正室・北条政子との間に生まれた頼家は、武勇の誉れある若武者として育った。
1193年(建久4年)に富士の麓で行われた巻狩りでは11歳で初めて鹿を仕留め、これは「山の神が頼家及び源氏の政権を承認した」ことを示すものであると受け取られ、鎌倉幕府は安泰であるかに思われた。しかし、頼家の生涯は悲劇としかいいようのない運命をたどることとなる。

1199年(正治元年)に父・頼朝が亡くなると、頼家が家督を継承した。
ちなみに、このときの彼は鎌倉幕府の長として「鎌倉殿」の称号は継承したものの、征夷大将軍に就任したのは3年後のことである。この時点ではまだ、幕府の長=征夷大将軍と完全には結び付けられていなかったことがわかる。
それでも、頼家は幕府の長として、父のように絶大な権力を振るうはずだった。もし彼がこの時点で一人前の武士であったならば、そのようになっただろう。しかし、頼家は頼朝にとって遅くに生まれた子であり、このときわずか18歳。父親のような優れた政治能力は望むべくもない――少なくとも、幕府の有力者たちはそう考えたらしい。

実際、そう判断されてしかるべき要素はいくつもあったようだ。
頼朝以来の寵臣・梶原景時ら側近ばかりを重用する。乳母および妻の実家である比企氏にも深く接近する。狩りに執着し、世間にそしられる。蹴鞠に熱中する。領地争いの裁定という大事な仕事に対して、絵図の真ん中に線を引いて終わりというような乱暴な処理をする。ある御家人の妾を奪ったばかりか、その男を殺害しようとし、命がけで立ちはだかった母に制止される……どれも、成立したばかりの大組織の長としてはやってはならないことばかりだ。

結果、頼朝の死からわずか3ヶ月後、母方の祖父にあたる北条時政を中心とした有力御家人たちは頼家から訴訟の裁決権を剥奪する。その上で、13人の宿老の合議制によって幕府を運営することを決めてしまったのである。
しかもこれは合議制とはいうものの、実際には北条氏の権力が別格に据えられた体制であった。「北条将軍」ともいえる、のちの鎌倉幕府は、このときに始まったといってよい。

病床のうちにすべては終わり……

頼家は政治から切り離され、封じ込められた形になった。しかも、側近である景時は、頼家を非難した人物を討伐しようと動いたことから逆に他の御家人たちの大反発を受けて追放、挙旬の果てに道中を襲われて殺されてしまう。その背景には当然のことながら北条氏の影があったようだ。
対して、頼家は比企氏と謀って北条氏からの実権奪還を企んだとされる。頼家には比企氏出身の妻との間に息子・一幡が生まれていたから、比企氏の勢力は確実に拡大しており、十分可能性はあったろう。
だが、これはうまくいかなかった。1203年(建仁3年)、頼家が突然の病に倒れたからである。

これを好機とみたのは北条氏であった。
頼家の継承していた権限を2つに分け、半分を一幡に、残り半分を千幡(頼朝の次男)に与える処置に出たのである。これは頼家を頼って北条氏と戦おうとしていた比企氏としては許せないことだったため、武力反乱を企んだ。
しかし、この計画を政子が盗み聞いたため、計画は失敗。当主の比企能員は誘い出されて殺され、一族も滅ぼされたのだった。後の禍根となりかねない幼い一幡もこのとき、殺害されてしまっている。

最後の企みも成就せず

残されたのはかろうじて命を拾った頼家だけだった。にもかかわらず、彼が生きているうちからその死が公表され、弟の千幡が源実朝として3代将軍に就任してしまう。
頼家は和田義盛・仁田忠常という2人の御家人に時政討伐を命じたものの、義盛は時政に内通し、忠常は殺害される。時すでに遅く、幕府の権力バランスは完全に北条氏へ傾いていた。
結局、頼家は伊豆の修禅寺に押し込められて、翌年に何もできぬまま殺害されて、その短い生涯を閉じた。

このように頼家の生涯をたどってみると、その悲劇には彼自身の行いによる自業自得の部分もあったように見える。
しかし、亡くなったときでさえ20歳をいくつも出ないような若者であった。先述したような暴挙の数々にしても、一部は幕政から排除された後、その鬱憤を晴らすためのものだったのでは、ともみられている。
さらにいえば、北条氏と比企氏という2つの有力武家が対立する中、北条氏側が比企氏の求心力を低下させ、自らを正当化するために頼家を利用した可能性もあり、やはり哀れと感じざるを得ない。

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