内乱すれすれの大規模戦闘に至ったケース
④に引き続いて、⑤も「大名権力強化パターン」である。
しかし、比較的大きな事件には発展しなかった④に対して、⑤は内乱すれすれレベルのものまで含めて大規模な事件になってしまったものだ。
江戸時代の政争はそうそう簡単に「小競り合い」「内乱」レベルには発展せず、内部の暗闘に終始するケースが多いように思われる。
これは争いが中央政権である幕府に目をつけられ、「謀反の兆し」や「領内や家臣を治められないのは藩主が無能だからだ」と言われれば、そのまま改易につながりかねなかったからだろう。
実際、江戸時代初期を中心に、このようなイチャモンから改易へ追い込まれた大名家は多く存在した。
もちろん家臣たちとしても改易になれば失業であり、基本的にはこのような事態は回避したい。そのために誰もが大規模な事件への発展をなるべく避けたいはずなのだが――それでも、お家騒動というのは起きるときには起きてしまうものなのである。
身につまされる教訓⑤ 大喧嘩になる前にもう一度冷静に
この⑤パターンお家騒動の結末は、どうにも凄惨なもの、取り返しのつかないものが多い。
断絶・改易となってしまったケース、小規模ながら武力騒乱にまで発展したケース、そして藩役人たちが多く連座させられたケース――自らの権力を強化したかった大名にしても、特権を守りたかった家臣にしても、こんな結果を望んでいたのではなかっただろう。
多くの場合、事件というのは進展する中で収拾がつかなくなってしまうもの。誰か首謀者が居たとしても、さまざまな立場の人々が独自の思惑を持ち込んで自分の思い通りにしようとする中で、野火が燃え広がるように急激に規模が拡大、気がついてみたら大惨事に……というのは、決して珍しい話ではないのである。
皆さんの身の回りでも、同種の現象は少なからず見られるのではないか。
特に人間関係トラブルはこうなりがちで、喧嘩するつもりはなかったのに大喧嘩、ついには決別して絶交、「こんなはずではなかったのに」と嘆く――そうなる前に、双方が一度冷静になることができれば、本章で紹介したお家騒動のような悲劇的結末は迎えないはずなのだ。