攻城団のデータではお城の階層を「5重5階、地下1階」と表記しています。
書籍やパンフレットによっては「5層6階」と書いてあったり、「5重6階(地上5階、地下1階)」と地上と地下の階数を足してあったりしますが、上記のように統一しました。
「重」と「層」のちがい
たとえばWikipediaを見ると、松前城は「独立式層塔型3重3階」で、弘前城は「独立式層塔型3層3階」となっているように、いろんなお城の階数・階層の数え方に「〜層〜階」や「〜重〜階」が混在しています。
これまでも二通りの呼び方があるのは知ってたんですけど、どんなふうに使い分けているのかがわからなかったので調べてみました。
結論からいうと、どちらが正しいというわけじゃなくて、研究者によって「層」を用いる人もいれば、「重」を使う人もいるみたいですね。
西ヶ谷恭弘先生は「〜層〜階」を採用されていて、「層」が屋根の数、「重」は地階も含んだ床の数、「階」は地下を含まない階(地上階)の数として使ってらっしゃるようです。
一方で、三浦正幸先生は「〜重〜階」を使用していて、外観の屋根を「重」、内部の床の数を「階」と説明されています。
ちょうど家にあった西ヶ谷先生の「日本の城 透視&断面イラスト」を見てみたのですが、呼び方に関する記述はなかったです。ただお城の紹介はすべて「〜層〜階」と表記されていました。
(正確には「〜層〜階地下〜階」とあって「重」は使われてないですね)
天守の階数の数え方
西ヶ谷案 | 三浦案 | |
---|---|---|
屋根の数 | 層 | 重 |
床の数 | 重 | 階 |
地上階の数 | 階 | |
例(姫路城) | 5層7重・6階 | 5重7階 |
ねんのため図書館で(層・重・階についての記載がある)「復原 名城天守」を借りてきたところ、たしかに上記の通りの記載がありました。
(「復原 名城天守」P.205)
一方、三浦先生の「城のつくり方図典」には
なお、「層」を「重」の代わりに用いることもあるが、「階」の代用にもされ、曖昧なので使わないほうがよい。
(「城のつくり方図典」P.93)
とありますね。 ようは「5層6階の天守」ならまちがいがないけど、「5層の天守」とだけ書かれていた場合に誤解が生じるおそれがあるということですね。
いずれも外観と内部構造が不一致することがけっこうあるという点では共通しています。望楼型はそもそもそういう構造ですし、地下の穴蔵の有無でも変わってきますので、外観(屋根の数)と内部をわけて表記するという考え方は同じです。
ほかの研究者はどうされてるかと調べてみたところ、小和田哲男先生が監修された「ビジュアル・ワイド 日本の城」では「層」が採用されていました。もうひとり、中井均先生の本も見てみると、中井先生が書かれた「徹底図解 日本の城」では「重」で表記されており、専門家の間でもけっこうわかれていることがわかります。
お城側はどのように表記しているのか
では姫路城などの公式サイトでどのように表記されているのかを確認してみます。
天守の階数の数え方(国宝5城公式サイトの表記)
姫路城 | 5重6階、地下1階 |
---|---|
彦根城 | 3重3階 |
松本城 | 5重6階 |
犬山城 | 3層4階、地下2階 |
松江城 | 「5層」とあるものの全体の表記はなし |
これも混在しています。犬山城と松江城は「層」、それ以外は「重」を使っていますが、姫路城の「5重6階、地下1階」は地下と地上でわけて表記していて、彦根城や松本城は穴蔵(地下階)の表記がありません。
屋根の数を「層」と呼ぶか「重」と呼ぶか以前に、地上階と地下階をどう表記するかもややこしいですね。
攻城団は屋根を「重」、階数は地上と地下をわけて表記します
決まりがないのであれば、初心者にも誤解なく伝わるような表記を採用するべきだと考えて、攻城団では天守の階層表記について「〜重〜階、地下〜階」と「屋根の数」を「重」で表し、その後ろに地上の階数、さらにその後ろに地下の階数を表記するようにします。
階数表記については現代の建築物でもたとえば「10階建てのビル」に地下階は含まないように、地上階のみをカウントしたほうが誤解が生まれないと考えました。
その上で地下階についても明示的に表示することで、結果として穴蔵の有無もはっきりわかるようになったので、現状ではベストだと思っています。
たとえば犬山城のように地下2階もあるようなケースでも、「3重4階、地下2階」と書いたほうが、「3層6重・4階(西ヶ谷案)」や「3重6階(三浦案)」より読んだ人のイメージにズレが生まれにくいかなと。