NHK大河ドラマ「麒麟がくる」、第6回「三好長慶襲撃計画」もおもしろかったですね。
主人公が本来会うことのできなかったような人に対面したり意見したりといったシーンは過去の作品でも見られたし、ある意味では(ひとりの主人公の視点を通して物語が進行する以上)しょうがないのですが、昨日の戸襖越しに将軍・足利義輝が聞いているという演出はうまかったですね。いくらなんでもこの時点の光秀が直接、義輝に拝謁できるわけないので、そのリアリティは守りつつ、たまたま壁一枚を隔てたところに居合わせた将軍が光秀の主張を聞くというのはさすが池端さんの脚本だなあと。
(その点、伝聞情報でストーリーを展開した三谷さんの「真田丸」も上手でしたね)
義輝と三淵藤英がひとことも会話することなく、目配せだけで意思疎通したのもいいシーンでした。
前回、伊平次が「松永様に20丁お作りしたとする。松永様は三好長慶様のご家老分ゆえ、三好様はよろしいのですが、ご主君の細川晴元様は途端に不機嫌におなりになる。三好方に負けぬよう30丁作れと仰せになる。すると、それを知った将軍様が50丁作れとお命じになる」と当時の諸勢力の関係性をうまくセリフを使って説明してましたが、こういう説明のためのセリフが活きるのも無駄なところで使わないゆえですよね。
ちなみに細川晴元が三好長慶を暗殺しようとするほど主従の関係が悪化していることについては少し予備知識があったほうが楽しめるかもしれません。
じつは長慶の父・三好元長は晴元の重臣だったのですが、家臣である元長の勢力が拡大していくことにおそれを抱いた晴元によって殺害されているのです。当時10歳だった長慶は母親と阿波へ逃れ、再起を図ります。ただいかんともしがたい力の差があったこともあり、長慶は父の仇である晴元に仕えることにします。
長慶は有能でどんどん出世したため、父同様に晴元から命を狙われたというわけです。
そして当時、長慶が本拠にしていたのが「連歌の会が終われば越水に戻る」と語った越水城です。
番組最後の「紀行」でも紹介されていましたね。
越水城――三好長慶、のちに松永久秀の居城に――
三好長慶の居城というと飯盛城や芥川山城を思い浮かべる方も多いと思いますが、阿波から進出した長慶はこの頃、摂津の越水城を居城としていました。「小清水城」とも書きます。
いまの西宮市ですから、ここから京都市内までお忍びでやってくるというのはけっこうな距離です。
三好長慶が芥川山城に居城を移すと、松永久秀が城主となりました。
いまは西宮市立大社小学校などの敷地になっており、城址碑と案内板が設置されています。
これまで三好長慶は松永久秀の下剋上を許した凡庸な大名という評価がされてきましたが、天野忠幸先生などの研究により、むしろ織田信長が手本とした革新的な政策を多数おこなった先駆者としての再評価も進んでいます。
ドラマでは松永久秀も悪人とは思えぬキャラクターで描かれていますし(ときどきニヤリと不敵な笑みがありますが)、主人公の明智光秀をはじめ、「麒麟がくる」は多くの武将の汚名返上のきっかけになるかもしれませんね。
最後に、ぼくが毎週楽しみにしてるKEI-COさん(@keico)の麒麟絵をご紹介。
麒麟がくる第6話。三好長慶を亡き者にしたい細川晴元による襲撃計画。ピンチに登場した光秀の戦隊ヒーローの主役さながらのカッコよさ、カラフルで外連味溢れる戦闘シーンが楽しかった!光秀の思う将軍と武家のあり方に共感した藤孝。二人の間に絆が生まれるところが好きでした。#麒麟がくる #麒麟絵 pic.twitter.com/ucgawE0iJe
— KEI-CO (@keico) 2020年2月23日