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「旧国宝」のバッジを公開しました(国宝と旧国宝のちがい)

現在、国宝に指定されているお城は姫路城、彦根城、犬山城、松本城、松江城の5つです。2015年(平成27年)に松江城が選定されるまでは「国宝4城」という呼び方が定着していたので、まだ5城になったことに慣れない方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
(ちなみに二条城も国宝なのですが、これは「城郭」としてではなく二の丸御殿が「住宅」として指定されています)

さて、では「国宝」というのはなんなのでしょうか。似たような言葉で「重要文化財」というのがありますが、国宝とのちがいを説明できますか。
これは1950年(昭和25年)に施行された「文化財保護法」が関係しています。「文化財保護法」では重要文化財のうち、とくに価値が高いものを「国宝」としているんですね。つまり国宝は重要文化財の一部ということになります。

そしてここからが本題なのですが、「文化財保護法」施行前、戦前の日本にも「国宝」があったのです。
こちらは1929年(昭和4年)に施行された「国宝保存法」にもとづくもので、現在の国宝と区別するために一般的に「旧国宝」と呼ばれています。

1950年(昭和25年)に「国宝保存法」が廃止されて「文化財保護法」に切り替わったとき、「旧国宝」はすべて「重要文化財」になりました。そこから先の説明のとおり「国宝(新国宝、現国宝)」が選ばれています。

これらを図式化するとこんな感じです。

「旧国宝」に指定されていたお城

旧国宝に最初に指定されたのはどこのお城だと思いますか。
答えは1930年(昭和5年)に城郭建築としてはじめて指定された名古屋城です。以降、1947年(昭和22年)までに24城が指定されていました。その後、第二次世界大戦や地震などで倒壊・焼失した際に指定解除となったりしたものもあります。
指定年順に一覧表にまとめたのが以下となります。

「旧国宝」一覧

城名 指定年 指定対象 備考
名古屋城 1930年(昭和5年) 大天守、小天守、本丸御殿、西南隅櫓、東南隅櫓、西北隅櫓、東北隅櫓、不明門、正門など24棟 戦災で天守などほとんどを焼失。
姫路城 1931年(昭和6年) 天守群(大天守、西小天守、乾小天守、東小天守、イ・ロ・ハ・ニ渡櫓)8棟に加え、櫓、門など74棟 現在、天守群は国宝。
仙台城 1931年(昭和6年) 大手門、隅櫓 戦災で大手門、隅櫓ともに焼失。
岡山城 1931年(昭和6年) 天守 1933年(昭和8年)に「月見櫓、石山門、西手櫓」が追加指定。戦災で天守、石山門を焼失。
福山城 1931年(昭和6年) 天守 1933年(昭和8年)に「伏見三層櫓、御湯殿、筋鉄御門」が追加指定。戦災で天守、御湯殿を焼失。
広島城 1931年(昭和6年) 天守 戦災で天守は倒壊。
熊本城 1933年(昭和8年) 宇土櫓、源之進櫓、不開門、長塀など13棟 戦災を免れ重要文化財として現存。
首里城 1933年(昭和8年) 守礼門、歓会門、瑞泉門、白銀門 戦災で焼失。
丸岡城 1934年(昭和9年) 天守 1948年(昭和23年)の福井大震災で倒壊、古材を使用して1955年(昭和30年)に修理再建。
宇和島城 1934年(昭和9年) 天守、追手門 現在、天守は重要文化財。追手門は戦災で焼失。
高知城 1934年(昭和9年) 天守、懐徳館(本丸御殿)、黒鉄門、西多聞櫓など14棟 戦災を免れ重要文化財として現存。
犬山城 1935年(昭和10年) 天守 現在、天守は国宝。
金沢城 1935年(昭和10年) 石川門5棟 現在、石川門、三十間長屋、土蔵(鶴丸倉庫)が重要文化財。
和歌山城 1935年(昭和10年) 大天守、小天守、北西隅櫓、西南隅櫓、楠門、東倉庫など11棟 戦災ですべてを焼失。
松江城 1935年(昭和10年) 天守 現在、天守は国宝。
松山城 1935年(昭和10年) 天守、天神櫓、乾櫓、野原櫓、筒井門、戸無門、仕切門内塀など35棟 戦災で天神櫓などを焼失。1949年(昭和24年)には放火で筒井門などを焼失。残った天守以下21棟が重要文化財。
松本城 1936年(昭和11年) 天守、乾小天守、渡櫓、辰巳附櫓、月見櫓 現在、天守は国宝。
大垣城 1936年(昭和11年) 天守、艮櫓 戦災で焼失。
弘前城 1937年(昭和12年) 天守、辰巳櫓、未申櫓、丑寅櫓、追手門など8棟 現存建物はすべて重要文化財。
二条城 1939年(昭和14年) 二の丸御殿のほか、門、櫓など24棟 現在、二の丸御殿6棟は国宝(ただし「近世以前/住宅」の種別での指定)。
備中松山城 1941年(昭和16年) 天守、二重櫓、三ノ平櫓東土塀 すべて重要文化財。
松前城 1941年(昭和16年) 天守(三重御櫓)、本丸御門、本丸御門東塀 1949年(昭和24年)に役場火災の飛び火により、天守、本丸御門東塀が焼失。
丸亀城 1943年(昭和18年) 天守 現在、重要文化財。
高松城 1947年(昭和22年) 月見櫓、水手御門、渡櫓、艮櫓 現存建物はすべて重要文化財。

これらをまとめたバッジ「旧国宝24城」を本日公開しました!

ちなみに現在国宝に指定されている5天守のうち、彦根城のみ旧国宝に指定されていなかったのは知りませんでした。
1931年(昭和6年)頃に打診はあったそうですが、当時は井伊家の個人所有で井伊直忠伯爵が断ったそうです。その後、彦根城は1944年(昭和19年)に彦根市に寄付され、1952年(昭和27年)に国宝(新国宝)に指定されています。

第二次大戦時に本土空襲で焼失した天守

なお天守のみにかぎっていえば、以下の6城の旧国宝天守が戦災で焼失・倒壊しています。

名古屋城 1945年(昭和20年)5月14日焼失
岡山城 1945年(昭和20年)6月29日焼失
和歌山城 1945年(昭和20年)7月9日焼失
大垣城 1945年(昭和20年)7月29日焼失
広島城 1945年(昭和20年)8月6日倒壊
福山城 1945年(昭和20年)8月8日焼失

余談

「国宝」バッジとあわせて天守が指定された城だけを対象とすべきか迷ったのですが、櫓や門など天守以外の遺構が指定されていたお城も含めることにしました。その理由は、まず現在の国宝が天守のみになっているのはたんに結果であって条件ではないこと(希少性などの観点で天守が選ばれているだけ)、それと――こちらの理由のほうが個人的には重視したのですが――天守に限定するとほとんどが戦災で失われているため、イメージが戦争に直結するのを避けたかったからです。

また、ネットの情報では水戸城の天守(御三階櫓)が旧国宝に指定されていたという記事がいくつか見つかったので、水戸市役所の歴史文化財課に問い合わせてみたところ、先方でも即答できないということで、文化庁に照会していただけることになりました。その結果「国宝ではなかった」ことが判明しました。
このようにご協力をいただけたことを心から感謝しています。

最後に、「重要文化財」のバッジも準備中ですので、こちらも楽しみにしていてくださいね。
(すでにバッジのデザインはこのページでチラ見せしちゃってますが)

あと以下の本がとても参考になりました!

   
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