なお上田城については大河ドラマ館の入館者数を含めない、従来どおりの櫓門だけの有料入城者数だと思われます。
攻城団では毎年全国のお城(具体的には自治体や管理運営団体、観光協会等)にヒアリングをして、それぞれの入城者(入場者)数を調査・集計しています。
お城によって「年」だったり「年度」だったりと集計期間が異なるので、年度の締めが過ぎた4月から調査をはじめ、ひととおり数字が揃ったタイミングで発表させていただいています。
今年もようやく準備が整いました。
以下、今回のレポートをご覧いただく前の注意事項です。
では2017年版、全国の入城者数ランキングを発表します!
昨年、日本のお城の入城者数としては過去最高となる286万7051人という大記録を達成した姫路城に代わり、大阪城(大坂城)がトップに立ちました!
また上位の常連だった熊本城が地震の被害のため入城できなくなっているため今回は対象外となった一方、リニューアル工事が終わった小田原城がランクインしています。
例外は上田城で、前年比「1076.5%」というとんでもない数字になっていますが、これは信州上田真田丸大河ドラマ館の入館者数だからです。これを上田城の入城者として前年と比較するべきではないのですが、いちおう有料なのでこちらに含めました。
(ちなみに上田城跡公園の来園者数は一昨年以前も150万人以上でした)
順位 | 城名 | 2016年/平成28年度 | 2015年/平成27年度 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | 大阪城 | 2,557,394 | 2,337,813 | 109.4% |
2 | 姫路城 | 2,112,189 | 2,867,051 | 73.7% |
3 | 名古屋城 | 1,920,000 | 1,737,346 | 110.5% |
4 | 首里城 | 1,886,939 | 1,875,838 | 100.6% |
5 | 二条城 | 1,827,843 | 1,776,720 | 102.9% |
6 | 上田城 | 1,035,208 | 96,163 | 1076.5% |
7 | 松本城 | 990,361 | 927,055 | 106.8% |
8 | 小田原城 | 775,406 | 148,325 | 522.8% |
9 | 彦根城 | 774,727 | 735,201 | 105.4% |
10 | 会津若松城 | 593,177 | 634,314 | 93.5% |
こちらは無料で見学できるお城(城址公園など)も加えたランキングとなります。
チケット販売数のように確実な数字ではないので、概算となっているお城が多いですが、金沢城(五十間長屋と金沢城公園の合算値)や米沢城(上杉記念館、上杉博物館、上杉城史苑、上杉神社の合算値)や江戸城(皇居東御苑の入園者数)などが入っています。
順位 | 城名 | 2016年/平成28年度 | 2015年/平成27年度 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | 大阪城 | 2,557,394 | 2,337,813 | 109.4% |
2 | 金沢城 | 2,266,559 | 2,382,700 | 95.1% |
3 | 姫路城 | 2,112,189 | 2,867,051 | 73.7% |
4 | 名古屋城 | 1,920,000 | 1,737,346 | 110.5% |
5 | 首里城 | 1,886,939 | 1,875,838 | 100.6% |
6 | 二条城 | 1,827,843 | 1,776,720 | 102.9% |
7 | 江戸城 | 1,455,592 | 1,183,522 | 123.0% |
8 | 米沢城 | 1,195,789 | 1,292,437 | 92.5% |
9 | 上田城 | 1,035,208 | 96,163 | 1076.5% |
10 | 松本城 | 990,361 | 927,055 | 106.8% |
今回は83城から回答をいただきましたが、近年のお城ブーム・お城めぐりブームはまだ継続しているようで、ほとんどのお城で前年比がプラスになっていました。
昨年と一昨年の2年間両方の数字が手元にある59城の合計入城者数が「24,876,558人」から「26,584,226人」と107%に増えていることからも、むしろ城めぐりは趣味として定着しつつあることをある程度裏付けする数字となっています。
(いうまでもなくこの数字は重複を含んだ「のべ」人数です)
また有料無料を無視した数字だけでいうと、100万人以上のお城が9城、10万人以上のお城が45城もありました。
10万人未満のお城にも苗木城や赤木城など攻城団で高評価のお城がありますし、ほかにもポテンシャルの高そうなお城が多数ありますので、ぼくとしては上位の動向よりもこの「10万人ライン」をこえるお城の数が今後どのくらい増えていくのかに関心を持っています。
なおひとつの例として「国宝5城」を見てみると、5城のうち姫路城だけが突出していて、松本城、彦根城でさえ100万人に届いていません。
アクセスの便利さにおおむね比例していると思われますが、国宝以外の「現存天守」の城にしても、まだまだその魅力を十分に伝えきれてないお城はメジャーどころにもたくさんありそうです。宇和島城が5万人ってどう考えてももったいないですよね。
攻城団としてはこのあたりのギャップを埋めていく役割をになっていければとあらためて思いました。
誇張や虚飾で良く見せるのではなく、その城の持つ魅力をそのまま正しく伝えていくだけで十分増えていくと信じています。
今回、ランキングを整理していて目立ったお城についてコメントします。
2016年(平成28年)5月1日に改修工事を終えて再オープンとなった小田原城ですが、工事前の50万人と比べても大幅に伸びています。
マスメディアでの露出が多かったことに加えて、『真田丸』の影響も少なからずあったのではないかと思います。今年の「北条五代祭り」には『真田丸』で北条氏政を演じた高嶋政伸さんがそのまま氏政役として参加されましたし、駅前は「お城通り地区再開発事業」が進んでいるので今年もそう大きくは落ち込まないかもしれませんね。
リニューアルオープンの2年目ということで、前年比73.7%となりました。
おそらく200万人前後でしばらく推移するのかなと思いますが、姫路城の今後の数字は現在木造での天守再建を検討している名古屋城や、震災被害からの復興を目指す熊本城にとっても参考になるでしょうね。
また海外からの観光客が伸びているという話も聞いているので、駅からお城までのルートをもっと外国人向けに見直してもいいのかもしれないなと先日歩きながら感じました。
海外からの観光客という観点では、大阪城がおそらく全国でもっともインバウンド観光客を取り込めているお城だと思います。日本政府観光局(JNTO)の資料によれば、訪日外国人の数は(東日本大震災で落ち込んだあと)2013年頃から伸びているのでだいたい符合しますね。
大阪城は広い城域が公園化されていることに加え、巨大な堀と(外観は史実無視とはいえ)世界的にも珍しい高層建築物であるあの天守のインパクトが外国人にもウケているのでしょうね。
去年はさらに『真田丸』効果もあったのでしょう。
竹田城は完全にブームが沈静化しました。2014年度の58万人をピークに2年連続で大きく前年割れがつづいています(前年比で71.4%、78.1%)。
おそらくは旅行会社によるバスツアーが減った影響ではないかと分析していますが、ブームになる前は10万人未満だったので、あとはこの30万人を維持できるかでしょう。むしろ異常な状況だった時期に大きな事故が起こらなくてほんとうによかったと思いますし、朝来市や和田山町の方々の努力に敬意を表します。
これは各地にヒアリングをしてくれたコースケさんから聞いた話ですが、天守等の有料エリアといわゆる公園部分(無料エリア)がある場合、有料エリアについてはチケットの販売数で確実な数字が出せるものの(とはいえ招待チケットや無料招待日などがあると確実ではなくなります)、無料エリアについてはたとえば近隣住民が犬の散歩で毎日訪問していた場合にもカウントするのか定義が決まっていないようです。
たしかにこうした観光客以外の入城者(この場合、来園者)を含めるかどうかで数字は大きく変わってきますね。
また観光庁が推進していることもあり、インバウンド観光にはどこも積極的に取り組もうとしているものの、実態としてはカウント時に海外からの観光客かどうかを把握していないので、費用対効果がつかめないという課題もあるようです。
姫路城では外国語版のパンフレットの消化率で概数を把握していると教えてもらいましたが、各国語版のパンフをつくれるお城はかぎられてますしね。
参考までに、ほかのレジャースポットや観光スポットの来場者数と比べてみましょう。
テーマパークで見ると、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の2016年度入場者数が1460万人、東京ディズニーリゾート(TDR)が3000万人とあり、これは桁がちがいますね。
もう少し近い数字だと、東京スカイツリーの2016年度来場者数が449万人、東京タワーが年間約250万人(うち外国人は約56万人)、ぼくの地元の京都タワーは年間約50万人とお城に近い数字となっています。
動物園・水族館では、旭山動物園の2016年度入園者数が102万人(有料のみ)、上野動物園が約400万人、沖縄美ら海水族館が約340万人、海遊館が約245万人と、こちらも上位のお城の数字に近いですね。
これまでお城の入城者数ランキングとして発表されてきたのは全国城郭管理者協議会が発表するものが中心で、加盟城郭に限定されたものでした。
ではなぜ攻城団がわざわざ調査をして発表するのか。
これは「スタンプのない『日本100名城』以外のお城の訪問記録も残したいから攻城団をつくった」のと同じ理由です。
ぼくらは「わかりやすさのためにあえて絞ること」を否定しません。攻城団でも「制覇モード」という機能を用意して、初期状態では知名度の高いお城だけが検索結果に表示されるようにしています。初心者にとって多すぎる選択肢は不親切でしかないとぼくは考えています。
ただし非表示にしたお城も確実に存在していたのです。そのお城にも歴史があり、現地では見学しやすいように整備をしたり案内板や城址碑を建ててくださっている方々がいらっしゃいます。
そこで攻城団は特定の基準にとらわれず、可能なかぎり対象を広くとって調査をおこない、お城を大事にされている方々の成果も記録していこうと決めました。
そして数字を把握し共有するだけでなく、長くマーケティングに携わってきた知見を活かしながら「なぜ伸びたのか(落ち込んだのか)」の考察も加えて、より多くのお城関係者のみなさんにとって役立つ存在になりたいと思っています。
現在はまだ十分に活かせていませんが、攻城団ではイベント情報や天気の情報の記録もありますし、団員が残してくれた膨大なコメントもあります。
こうした定量・定性情報を組み合わせつつ、お城を観光振興に活かす成功モデルを構築していきたいのです。
具体的な取り組みとしては、攻城団では昨年から七尾城の観光支援プロジェクトに協力しています。
じっさいに成果が出るのは今年の夏以降ですが、ぼくらが目指しているのは「じっさいにお城に訪問する方を増やす(そして満足いただき再訪問率も高める)」ことなので、七尾だけでなく全国各地の観光再生にたずさわっていければと思っています。
丸岡城のモデルコース掲載(城たび)なども多少なりとも貢献できていると自負していますが、きちんと前後の数字を把握して、貢献度を数字で証明することから逃げることなく取り組んでいきます。
なので来年以降も、攻城団では可能なかぎり多くの城・城址(管理事務所や自治体の広報課、観光協会等)に問い合わせて、各地を訪問した観光客の数値を把握して発表していきます。関係各所のみなさまにはお忙しい中恐縮ではございますが、ご協力をお願いいたします。
ぼくらは攻城団を、利用者にとって楽しく便利なだけでなく、現地の方々にも喜ばれるようなサービスに育てていきたいので、引きつづきご支援くださいますようお願いいたします!
全国のお城にご協力いただき集計したデータを以下に公開します。
全国のお城の入城者数(観光客数)調査レポート【2017年版】
toproadさんが城がたり「よくわかる小牧山城」を企画してくれました。愛知県小牧市と調整してくださり、学芸員の方にZoomで話していただけることになりました。小牧山城の歴史、発掘調査の成果など、いろんな話が聞けると思いますのでぜひご参加ください。
つづきを読む昨年に続いて第6回目となる団員総会を開催したのでレポートを書きました。今年は去年と同じ会場でしたが、内容はかなりアップデートしています。とくに「お城ビンゴ」は盛り上がったので、今後の定番ゲームにしていきたいですね。来年はさらに多くの団員と集まりたいです。
つづきを読む美濃守護・土岐氏の庶流である久々利氏の居城、久々利城にも攻城団のチラシを置いていただきました。可児郷土歴史館と久々利地区センター、さらに可児市観光交流館で入手可能です。
つづきを読む小栗信濃守によって築かれた本陣山城(御嵩城)にも攻城団のチラシを置いていただきました。「東美濃の山城を制覇せよ!」キャンペーンの缶バッジ受取場所でもある、御嶽宿わいわい館で入手できます。
つづきを読む土岐明智氏の居城であり、戦国時代にはその一族である妻木氏の居城になった妻木城にも攻城団のチラシを置いていただきました。もとてらす東美濃で入手できます。
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