攻城団からのお知らせ

全国のお城の入城者数(入場者数・観光客数)調査レポート【2018年版】

攻城団では毎年全国のお城(具体的には自治体や管理運営団体、観光協会等)にヒアリングをして、それぞれの入城者(入場者、入館者、入園者等)数を調査・集計しています。
お城によって「年」だったり「年度」だったりと集計期間が異なるので、年度の締めが過ぎた4月から調査をはじめましたが、今年は去年を上回る106のお城の数字が集まりました(前回は83城)。

以下、今回のレポートをご覧いただく前の注意事項です。

  • このランキングは「2017年(1月〜12月)」もしくは「平成29年度(2017年4月〜2018年3月)」の数字を集計したものです
  • 数値については自治体等の発表資料を参照したほか、直接メールや電話でヒアリングをおこなっていますが、回答が得られなかったお城は対象外としています
  • 集計中や発表時期が夏以降と回答があったお城も対象外としています
  • 入城者数のカウント方法についてはそれぞれのお城ごとに異なっており、有料入城者数(=チケット販売数)のみのお城もあれば有料と無料を合算して発表されているお城もありますし、無料で見学できるため推計で発表されているところもあります

では2018年版、全国の入城者数ランキングを発表します!

2018年 全国入城者数ランキング(有料のみ)

昨年に引きつづき2年連続で大阪城が1位となりました。
しかも前年より約20万人も増加しています。日本のお城の入城者数の過去最高は平成の大改修が終わった2015年度に姫路城が記録した286万7051人ですが、その更新も見えてきましたね。なお大阪市の推計人口は271万6989人なのでこれを上回る人数となっています。
2位は本丸御殿が復元され、天守が工事のため入れなくなる名古屋城でした。3位には大政奉還150周年でさまざまなイベントを展開した二条城が選ばれています。この2城は名古屋城が63万7915人、二条城が55万2840人と前年と比較してそれぞれ約60万人の増加です。

姫路城は200万人割れの182万人となりましたが、工事前の2009年度が156万人だったので、このくらいの人数を維持していけるとキャパ的にもちょうどいいのかなと思います。再公開後は入城料も1000円に値上げしていますが、それもあってのこの数字ですからね。
なお熊本城はこれまで有料入城者数を発表してきていましたが、震災以後は無料エリアのみ開放されているためこちらには入れていません。

順位城名2017年/平成29年度2016年/平成28年度前年比
1大阪城2,754,3952,557,394107.7%
2名古屋城2,557,3941,919,479133.2%
3二条城2,439,0791,886,239129.3%
4姫路城1,824,7032,112,18986.4%
5首里城1,814,0141,886,23996.2%
6松本城912,587990,37392.1%
7彦根城835,958774,720107.9%
8小田原城738,086775,40695.2%
9会津若松城634,314584,094108.6%
10犬山城573,034543,224105.5%

2018年 総合ランキング

こちらは無料で見学できるお城(城址公園など)も加えたランキングとなります。
自由に出入りできる公園なども多く、チケット販売数のように確実な数字ではないため、概算となっているお城が多いです(おそらく江戸城の場合は皇居東御苑の入園者数なので正確だと思います)。
昨年同様、金沢城(五十間長屋と金沢城公園の合算値)や米沢城(上杉記念館、上杉博物館、上杉城史苑、上杉神社の合算値)などがランクインしました。

トップ10には入っていませんが、高岡城(博物館、動物園、市民体育館等施設すべての合算値)の86万人や、久保田城(佐竹史料館と御隅櫓は受付でのカウント、千秋公園はイベント含む目視の合算値)の72万人など、純粋にお城のみの人数ではないもののかなりの規模の数字であることが今回はじめて判明しました。

順位城名2017年/平成29年度2016年/平成28年度前年比
1大阪城2,754,3952,557,394107.7%
2名古屋城2,557,3941,919,479133.2%
3二条城2,439,0791,886,239129.3%
4金沢城2,263,4002,266,55999.9%
5熊本城2,107,9121,421,715148.3%
6姫路城1,824,7032,112,18986.4%
7首里城1,814,0141,886,23996.2%
8江戸城1,488,1331,455,592102.2%
9米沢城1,267,8011,195,789106.0%
10松本城912,587990,37392.1%

総評、注目のお城など

去年と今年、両方の数字が手元にある62城の数字だけで見ると、昨年が「2666万2940人」で今年が「2828万9486人」と前年比で106%となりました(いうまでもなくこの数字は重複を含んだ「のべ」人数です)。ちなみに一昨年とその前年の伸び率は107%でした。
ただし個々のお城で見ていくと、前年比でプラスになっているのが32城、マイナスになっているところが30城と約半数のお城が前年割れしています。もちろんこの中には高知の中村城のようにリニューアル工事のために休館になっているところもありますし、ほとんどは1割以内の増減なので誤差に収まるのかもしれませんが、単純にお城ブーム・お城めぐりブームの追い風で何もしなくても人が来るといった状況ではなくなってきたともいえるでしょう。

以下は国宝5城の推移を示したグラフですが、5城のうち3城が前年比でマイナスとなっています。

次に具体的な事例を紹介します。
まず、10年にわたって本丸御殿を復元してきた名古屋城は天守に入れなくなることもあり大きく数字を伸ばしました。これは「大政奉還150周年」として年中さまざまなイベントをしかけてきた二条城にもいえることですが、ニュースで取り上げられる回数によって入城者数が左右されることは否めません。
ただしそれは入城者数が100万人をこえるようなところにかぎった話で、10万人前後のお城については地道な努力によって入城者を増やしていけると考えています。たとえば攻城団が昨年支援してきた七尾城は推計値ではありますが、2万3000人から3万人と3割アップとなっています。きちんと情報をネット上に発信していくことで一定の効果が得られる事例になったと思います。

攻城団が支援したいのは一時的な増加ではなく、ベースアップです。
「○周年」などで大々的なイベントを開催して入城者が増えるのはいいことですが、その数字を維持していくために情報を整理したり、コンテンツをつくったり、フォトコンテストやガイドツアーなど小規模で毎年継続できるイベントにシフトしていくことを提案しています。

また前年比のトップは長宗我部氏の居城である岡豊城の168.3%(4万0121人)でした。岡豊城は「続日本100名城」にも選ばれているので、今年はさらに増えることが期待されます。
なお、昨年度のほんとうのトップは大河ドラマ「おんな城主 直虎」の影響で大きく数字を伸ばしたであろう井伊谷城浜松城だと思いますが、この2城はまだデータが届いていません。もし数字が揃ったら全体の前年比ももう少し高くなる可能性があります。

毎回この調査をすると、全国にはまだまだ魅力が世間に伝わっていないお城が多いことに気づかされます。
茨城県の山方城は820人とのことですが、かわいい模擬天守があるのでもっと増えてもおかしくないですし、秋田県の脇本城の357人も驚きました。その反面、攻城団の評価ランキングで常に上位にいる岐阜県の苗木城が前年比147.1%(7万6902人)だったのは魅力が伝わってきている感じでうれしく思いました。

注目のお城

今回、ランキングを整理していて目立ったお城についてコメントします。

名古屋城

名古屋城は昨年度、過去最高の入城者数(255万7394人)となりました。天守に入れなくなるという駆け込み需要がおもな要因ではありますが、現時点においてはまだほんとうに木造復元されるのかについて未確定で、そのため予定では2022年12月に竣工となっていますが、完成時期も未定です。
なお河村市長は再公開後は年間400万人の入城者を見込んでいるとのことですが、物理的なキャパや現場のオペレーションが可能なのかについての疑問もあります。

小田原城

小田原城はリニューアル2年目となり、前年からは微減です。ただし小田原城の集計期間は年度で、かつ昨年度は5月1日に再オープンしていますので実質11か月での数字だったことを踏まえると、日単位での落ち込みはもう少し大きくなります。
それでも工事前の50万人と比べれば20万人以上増えていることになりますので、あとはどこまでこの数字を維持していけるかでしょうね。

彦根城

彦根城は昨年、大河ドラマによってプラスの影響があったお城のひとつですが、6年ぶりに80万人をこえました(83万5958人)。
ひこにゃんという全国区のキャラクターがいて、天守は国宝に指定されており、またアクセス面においてもJR彦根駅からは徒歩圏内で近くに高速道路のインターチェンジもある彦根城ですら、年間100万人に到達していないというところにお城の観光マーケティングについての課題やヒントがあるような気がします。

竹田城

竹田城はさらに下落してブーム初期の5年前の水準まで戻りました。2014年度の58万人をピークに3年連続で大きく前年割れがつづいていますが、とくに昨年度は過去最大のマイナスでした(前年比で71.4%、78.1%、69.0%)。
去年のレポートでは「30万人を維持できるか」と書いたのですが、適正な人数は20万人くらいになるのかもしれません。30万人でも20万人でもいいのですが、朝来市や和田山町がちゃんと潤っているのかが気になります。

松江城

2015年(平成27年)に国宝に選ばれた松江城ですが、翌年から少し下がって入るもののまだまだ好調のようですね。
松江城はアクセス面でけっして恵まれていないこともあり、今後の推移は「国宝化」が与える好影響についての重要なサンプルになると思います。国宝指定を目指すほかの現存天守にとっても目が離せないでしょうね。

入城者数把握のむずかしさ

「入城者」といってもじつは統一された基準ではないことはあらためて説明しておきます。
天守等の有料エリアの場合、チケットの販売数で確実な数字が出せるものの、招待チケットや無料招待日などがあると誤差が生じます。そして城址公園など無料エリアについては、たとえば近隣住民が犬の散歩で毎日訪問していた場合にもカウントするのかなど、こうした観光客以外の入城者(この場合、来園者)を含めるかどうかの基準が決まっていないようです。

またインバウンド観光にはどこも積極的に取り組もうとしていますし、じっさいにぼくらが各地のお城を訪問していても外国からの観光客が増えていることは実感しています。しかし実態としてはカウント時に海外からの観光客かどうかを把握できていないので、費用対効果がつかめないという課題もあるようです。
姫路城では外国語版のパンフレットの消化率で概数を把握していると教えてもらいましたが、各国語版のパンフをつくれるお城はかぎられてますしね。

お城の集客力はどのくらいなのか

参考までに、ほかのレジャースポットや観光スポットの来場者数と比べてみましょう。
テーマパークで見ると、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の2016年度入場者数が1460万人、東京ディズニーリゾート(TDR)が3000万人とあり、これは桁がちがいますね。ちなみに3位はハウステンボスの289万4000人、4位はサンリオピューロランドの180万7000人ですので、このあたりが大阪城や姫路城に近い数字となります。

動物園・水族館では、上野動物園が384万3200人、名古屋市東山動植物園が240万8400人、旭山動物園が143万1335人、沖縄美ら海水族館が約360万人、海遊館が237万9725人と、こちらも上位のお城の数字に近いですね。
美術館・博物館では、国立新美術館が285万2477人、金沢21世紀美術館が255万4157人、東京国立博物館が190万7647人となっており、お城の来場者の規模はこうしたミュージアムといちばん近いようです。

なぜ攻城団が調査するのか

これまでお城の入城者数ランキングとして発表されてきたのは全国城郭管理者協議会が発表するものが中心で、加盟城郭に限定されたものでした。

ではなぜ攻城団がわざわざ調査をして発表するのか。

これは「スタンプのない『日本100名城』以外のお城の訪問記録も残したいから攻城団をつくった」のと同じ理由です。
ぼくらは「わかりやすさのためにあえて絞ること」を否定しません。攻城団でも「制覇モード」という機能を用意して、初期状態では知名度の高いお城だけが検索結果に表示されるようにしています。初心者にとって多すぎる選択肢は不親切でしかないとぼくは考えています。

ただし非表示にしたお城も確実に存在していたのです。そのお城にも歴史があり、現地では見学しやすいように整備をしたり案内板や城址碑を建ててくださっている方々がいらっしゃいます。

そこで攻城団は特定の基準にとらわれず、可能なかぎり対象を広くとって調査をおこない、お城を大事にされている方々の成果も記録していこうと決めました。
そして数字を把握し共有するだけでなく、長くマーケティングに携わってきた知見を活かしながら「なぜ伸びたのか(落ち込んだのか)」の考察も加えて、より多くのお城関係者のみなさんにとって役立つ存在になりたいと思っています。

現在はまだ十分に活かせていませんが、攻城団ではイベント情報や天気の情報の記録もありますし、団員が残してくれた膨大な写真やコメントもあります。こうした定量・定性情報を組み合わせつつ、お城を観光振興に活かす成功モデルを構築していきたいのです。

具体的な取り組みも少しずつですがはじまっています。
昨年は七尾城の観光支援プロジェクトに約一年にわたって協力し、その成果も今回数字で示すことができました。ほかにも同様の取り組みについて交渉しているところです。ぼくらが目指しているのは「じっさいにお城に訪問する方を増やす(そして満足いただき再訪問率も高める)」ことなので、全国各地の観光再生にたずさわっていければと思っています。

今回は前回以上に多くの数字を集めることができましたが、それでもまだすべてを把握できているわけではありません。
来年以降も、攻城団では可能なかぎり多くの城・城址(管理事務所や自治体の広報課、観光協会等)に問い合わせて、各地を訪問した観光客の数値を把握して発表していきます。関係各所のみなさまにはお忙しい中恐縮ではございますが、ご協力をお願いいたします。

ぼくらは攻城団を、利用者にとって楽しく便利なだけでなく、現地の方々にも喜ばれるようなサービスに育てていきたいので、引きつづきご支援くださいますようお願いいたします!

今回集計したデータ

全国のお城にご協力いただき集計したデータを以下に公開します。

全国のお城の入城者数(観光客数)調査レポート【2018年版】

   
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