現在、上田高校がある場所はかつて真田信之によって建てられた藩主屋敷跡にあたります。
同校の正門として利用されている表門は、1789年(寛政元年)に焼失したものを翌年再建したものです。
いわゆる薬医門形式の門で、上田市の文化財に指定されています。
またこの門は2006年(平成18年)公開の映画「犬神家の一族」(市川崑監督)で、犬神家の裏門として使われました。
上田城は関ケ原合戦後に破却されたため、真田信之はこの地に居館を構えました。
通常、城主の御殿は城の本丸または二の丸に設けられますが、上田城の場合は徳川家への配慮もあり、城の中心部から離れた、三の丸に建てられました。
その後、仙石氏・松平氏と藩主は変わりましたが、藩主邸はそのままここから移転せず明治維新にまで至っています。
なお、現在も水が残る堀(濠)と土塁は真田氏のときからのものと考えられます。
ただし水際の石垣は最近のもので、土塀については1863年(文久3年)に建てられています。
また堀の幅も道路拡張のために当時よりはせばめられています。
上田市指定文化財上田藩主居館表門及び土塀・濠・土塁
上田藩主の居館は、真田氏・仙石氏・松平氏の各時代を通して、現在の長野県上田高等学校の敷地となっている場所にあり、「御屋形(おやかた)」と呼ばれていました。
- 種別
- 史跡・建造物
- 所在地
- 上田市大手一丁目四番三三号
- 所有者
- 長野県
- 指定年月日
- 昭和四十四年五月九日
居館の遺構である表門・土塀・濠等に往時の姿をとどめています。
表門は、藩主松平忠済(ただまさ)時代の寛政二年(一七九〇)にその前年焼失した居館とともに再建されたものです。
前面には、四本の太い角柱が並び、中央間には大板扉を釣り、左右には潜りの扉がつけられ、後部の控柱は十六面に削った通し梁でつないでいます。
創建当時の様式がよく保たれており、長野県下最大規模の薬医門として貴重な存在です。
土塀は江戸時代末期の構築ですが、濠と土塁は真田氏時代の面影を残し、全体として江戸時代の大名屋敷の外廻りを知る良い例です。
但し、土塀の下部と濠の周囲の石積みは、崩落防止のために最近施行されたものであり、濠の幅も道路の拡張により狭められています。上田市教育委員会
藩主居館
上田城三の丸内の現上田高校の敷地は、真田氏以降、仙石(せんごく)氏、松平氏と続いた上田藩主の居館であり、「御屋形」と呼ばれていた。四囲に堀と土塁をめぐらした陣屋の構えを取っていた。
堀を含めた敷地の広さは、東西が74間3尺(135.5m)、南北が74間2尺であった。
屋形の基本的な構成は、当初から大きな変化はなかったものと見られるが、松平氏時代の様子のあらましは次のようだった。屋形は入口側から、御表・勝手・御奥の三つの殿舎群に分けられていた。御表は、藩主の公的な生活の場で、大書院・大広間等があった。勝手は、藩主の居間で小書院・表居間など、また、御奥には藩主の寝室・側室の部屋などがあった。