安土城
安土城

[滋賀県][近江] 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦


  • 平均評価:★★★★☆ 3.86(22位)
  • 見学時間:1時間30分(20位)
  • 攻城人数:3687(15位)

伝前田利家邸跡

大手道下部の右手には前田利家の屋敷跡と伝えられる場所があります。

伝前田利家邸跡
 ここは、織田信長の家臣であった前田利家が住んでいたと伝える屋敷の跡です。大手道に面したこの屋敷は、向かいの伝羽柴秀吉邸とともに大手道(おおてみち)正面の守りを固ある重要な位置を占めています。急な傾斜地を造成して造られた屋敷地は、数段の郭(くるわ)に分かれた複雑な構成となっています。敷地の西南隅には大手道を防備する隅櫓(すみやぐら)が建っていたものと思われますが、後世に大きく破壊されたため詳細は不明です。隅櫓の北には大手道に面して門が建てられていましたが、礎石が失われその形式は分かりません。門を入ったこの場所は枡形(ますがた)と呼ばれる小さな広場となり、その東と北をL字型に多聞櫓(たもんやぐら)が囲んでいます。北方部分は上段郭から張り出した懸造り(かけづくり)構造、東方部分は二階建てとし、その下階には長家門(ながやもん)風の門が開いています。この枡形から先は道が三方に分かれます。
 右手の道は最下段の郭に通じています。ここには馬三頭を飼うことのでさる厩(うまや)が建っていました。この厩は、江戸時代初期に書かれた有名な大工技術書『匠明(しょうめい)』に載っている「三間厩之図(さんげんうまやのず)」と平面が一致する貴重な遺構です。厩の脇を通り抜けると中段郭に通じる急な石階段があり、その先に奥座敷が建っていました。
 正面と左手の石階段は、この屋敷地で最も広い中段郭に上るものです。正面階段は正客のためのもので、左手階段は勝手口として使われたものでしょう。前方と右手を多聞櫓で守られた左手階段の先には、木桶(もくひ)を備えた排水施設があります。多聞櫓下段の右手の門を潜ると、寺の庫裏(くり)に似た大きな建物の前に出ます。広い土間の台所と、田の字型に並ぶ四室の遠侍(とおざむらい)が一体となった建物です。遠侍の東北隅から廊下が東に延びており、そこに当屋敷の中心殿舎が建っていたと思われますが、現在竹薮となっており調査が進んでいません。さらにその東にある奥座敷は特異な平面を持つ書院造り(しょいんづくり)建物です。東南部に突出した中門(ちゅうもん)を備えているものの、部屋が一列しかありません。あるいは他所から移築されたもので、移築の際に狭い敷地に合わせて後半部の部屋を撤去したのかもしれません。
 伝前田利家邸は、伝羽柴秀吉邸とほぼ共通した建物で構成されていますが、その配置には大きな相違が見られます。向かい合うこの二軒の屋敷は、類例の少ない16世紀末の武家屋敷の様子を知る上で、たいへん貴重な遺構です。
伝前田利家邸跡の虎ロ
 一般に屋敷地の玄関口に当たる部分を城郭用語で「虎口(こぐち)」と言います。伝前田利家邸跡の虎口は、大手道に沿って帯状に築かれた石塁(せきるい)を切って入口を設け、その内側に枡形の空間を造った「内枡形(うちますがた)」と呼ばれるものです。発掘調査の結果、入ロは南側の石塁及び門の礎右ともに後世に破壊されていて、その間口は定かではありませんが、羽柴邸と同じ規模の櫓門(やぐらもん)が存在していたと推定されます。門をくぐると左手には高さおよそ6mにも及ぶ三段の石垣がそびえ、その最上段から正面にかけて多聞櫓(たもんやぐら)が侵入した敵を見下ろしています。また、一段目と二段目の上端には「武者走り」という通路が設けられ、戦時に味方の兵が多聞櫓よりもっと近くで敵を迎え討つことが出来る櫓台(やぐらだい)への出撃を容易にしています。正面右手の石垣は、その裏にある多聞櫓へ通じる石段を隠すために設けられた「蔀(しとみ)の石塁」となっています。入口の右手は隅櫓が位置しており、その裾の石垣が蔀の石塁との間の通路を狭くして敵の侵入を難しくしています。このように伝前田利家邸跡の虎口はきわめて防御性が高く、近世城郭を思わせる虎口の形態を安土城築城時にすでに取り入れていたことがわかります。

奥にあるのが「蔀(しとみ)の石塁」と「三段の石垣」です。

また上段側には発見された木樋の位置を示す案内板があります。

発見された木樋(もくひ)
 これは多聞櫓(たもんやぐら)の床下から発見された木樋です。両側を石垣で挟まれ水路にはめられたこの施設は、上下二段からなるもので、上段の箱樋で水をいったん拾い、さらに下段の一木造り(いちぼくづくり)の樋を通して水を屋外に排水しています。
 出土した木製箸や爪、桃の種、烏貝(からすがい)の殻などの遺物と埋まっていた土の科学的分析から、この木樋は洗い場の水を排水するためのものと考えられます。
   

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