通常、天守の屋根にある鯱瓦(しゃちがわら)は雄と雌とで一対になっていますが、姫路城は二体とも雌の鯱となっており、これは全国的にも珍しいそうです。
鯱(しゃち)とは、姿は魚で頭は虎、尾ひれは常に空を向き、背中には幾重もの鋭いとげを持っているという想像上の動物で、大棟の両端に取り付け、鬼瓦と同様に守り神とされました。
破風に施される懸魚もそうですが、こうした城郭建築の場合、いちばんこわいのは火事で焼失することですから、願掛けやおまじないの意味も込めて水にゆかりのある装飾が施されていたわけです。
また、鯱瓦は仁王像や狛犬(こまいぬ)などのように「阿吽(あうん)」一対となっており、口を開けているのが「阿」で雄、閉じているのが「吽」で雌とされます。
姫路城の修復工事現場の見学会で撮影した大天守の鯱瓦です(2013年10月撮影)。
たしかに同じに見えますね。口は閉じているようです。
姫路城は江戸時代から残るいわゆる現存天守なのですが、鯱瓦についてはなぜか1体のみしか残されていなかったため、「昭和の大修理」の際に同じ形のものを作成して載せたそうです。
(現在は大天守には計11尾の鯱瓦が載り、すべて「昭和の大修理」で江戸時代のものから取り換えられ、今回の「平成の大修理」は最上部にある大棟の一対だけを交換したそうです)
ちなみにこれは以前、展示されていた歴代の鯱瓦です(2011年1月に撮影)。
すべてのモデルは1687年(貞享4年)の鯱瓦です。
なお、比較ができないためこの鯱瓦が雄か雌かはわからないのですが、口を閉じているように見えることや、当初置かれていた方向(西)などから、雌ではないかといわれています。