浜松城の天守門は天守曲輪の大手につくられた門で、安土桃山時代(16世紀末)に建てられ、江戸時代に改修が繰り返された後、1873年(明治6年)に取り壊されました。
2009年度および2010年度の発掘調査で見つかった礎石や、19世紀の絵図などをもとに、2014年(平成26年)3月に復元されました。総工費は1億7000万円で、三浦正幸先生が復元図を作成されたそうです。
高さ9.4m、幅11m、奥行き5mの巨大な櫓門で、門の上にある櫓には武器や食料を保管し、籠城戦になった際にはここから攻めて来る敵を弓矢や鉄砲で迎え撃てるようになっていました。
天守がなくなったあとも、そのまま明治維新まで残されていたと考えられています。
門の入口の両側にある巨石を「鏡石」と呼びます。迫力がありますね。
門脇(もんわき)の鏡石(かがみいし)
天守門の石垣正面は、左右ともに隅に巨石が用いられている。この巨石を鏡石と呼ぶことがある。
かつて城の壮大さや城主の権力を見せるため、門の両側や周辺に意図的に大きな石を用いたと言われており、彦根城太鼓門櫓や、岡山城本丸、松本城太鼓門の石垣等に類例がある。
巨石を用いた部分は算木積(石垣の角部を強固にするために、長い石材の長辺と短辺を左右交互に振り分けて積む積み方)になっていない。また、横長石も不揃いで、算木積とはいえない部分もある。
天守門再建の手掛かりになったのは、2009年と2010年に天守門跡とその周辺で行われた発掘調査の成果や、1854年(安政元年)に起きた安政地震の被害を記録するために描かれた浜松城の絵図です。
発掘調査で見つかった礎石の位置に、新しい礎石と門柱が配置されています。
天守門の礎石(そせき)
浜松市では平成21年度から天守門跡の発掘調査を行い、建物の痕跡を確認した。「安政元年(1854)浜松城絵図」の天守門が描かれている場所からは、長軸1.0〜1.4m、短軸0.9〜0.7mほどの扁平な礎石が4箇所と、礎石の抜取穴(ぬきとりあな)2箇所が発見され、門柱の配置や門扉の大きさが確認された。
また、建物の屋根瓦や鯱瓦(しゃちがわら)の一部、土塀の瓦も多数確認された。門の両脇の石垣上部からは、壁から剥がれ落ちた漆喰の痕跡も見つかっており、江戸時代の天守門の姿を明らかにする際の参考にした。
礎石に載る門柱6本は、不整形な両脇の石垣の開きに沿うように配置される。このような柱の配置は、桃山時代から江戸時代初期の櫓門にみられることから、天守門は、幕末まで古式な城門の特徴を継承していたことがわかる。
天守門の復元工事では、本来の礎石配置を忠実に再現し、地下の礎石のほぼ真上に、新しい礎石と門柱を配置した。石は築城時の石垣に用いられたものと同じ浜名湖北部産の珪岩(けいがん)である。
門の下には排水溝もあったそうですが、いつつくられたかはわからないそうです。
門下の排水溝
平成21年度からの発掘調査で、門下に瓦を用いた排水溝が発見された。
丸瓦を使用して排水溝を狭くしている部分があることから、かつて礎石が存在していた時点には、排水溝が造られていたと考えられる。土層断面から、瓦の排水溝埋没後に礎石の抜き取りがあったことがうかがえる。
排水溝は西側の雨落溝から屈曲し、南側の石垣に沿って配列されている。排水溝に使用された瓦は、江戸前期までの古い特徴をもつもので構成されているが、この排水溝がいつの時代に造られたものかは、正確には特定できていない。
内側(天守曲輪側)からの天守門です。
天守門の中にも入れます。天守と共通入場券になっています。
天守門復元の様子を紹介したビデオが流れています。
石落としも復元されています。
天守門の入口そばに案内板があります。
天守門
浜松城の第二代城主、堀尾吉晴は城の中枢である天守曲輪に天守を建築したと言われているが、この天守は古図などの資料から、江戸初期には喪失していたと考えられる。天守曲輪入口の天守門は幕末まで維持されたが、明治6年(1873)に解体され、払い下げられた。「安政元年(1854)浜松城絵図」には安政地震による浜松城の被害状況が示されており、天守門でも櫓の壁が一部潰れたものの、深刻な被害を免れた事が記載されている。
絵図には天守曲輪の外周を土塀が囲んでいる様子も描かれている。天守門は、門の上部に櫓が載る櫓門と呼ばれる形式がとられている。天守門のように櫓が両側の石垣上にのびる渡櫓(わたりやぐら)は、石垣を多用した西日本の城に多く見られる。天守門(復元)の概要は次の通り
- 構造:木造・櫓門・入母屋造り・本瓦葺き
- 建築面積:78.01m2 延床面積 56.74m2
- 門部:正面柱間4.09m、冠木(正面梁)上端高4.12m
- 櫓部:桁行10.91m(36尺)、梁間5.00m(16.5尺)
- 高さ:10.28m(門下から櫓屋根の大棟上まで)
- 土塀:木造塀瓦葺き 門の両側約9mずつ