9月21日に群馬県沼田市を訪問してきました。大河ドラマ「真田丸」にも登場した、沼田城があった街です。
今回の訪問は、沼田市が制作配布している「歩いてめぐる真田の里 沼田の城下町満喫MAP」(以下「沼女マップ」)について、どんなふうに企画が持ち上がって、どうやって制作が進んだのか、詳しい話を沼田市役所の金丸さんにお伺いするのが目的です。
というのも、ぼくらが七尾市で実施するプロジェクトでも「七尾城周辺(市内)観光マップ」の制作を想定していて、もともとはこの「沼女マップ」が念頭にあったからです。
「沼女マップ」は沼田市と県立沼田女子高等学校が共同制作されたのですが、行政と高校が共同で観光マップを作るということ自体がけっこうめずらしい取り組みですよね。
今日も石川県から向かいます。
都内から来た団長と合流して、いっしょに沼田市役所に向かいます。
観光交流課の金丸さまを訪ねました。
金丸さまには事前にお聞きしたかったことをリストにしてお送りしていました。お互いにリストを見つつ、まずはマップづくりがはじまったきっかけからお伺いしました。
当初、ぼくはこんなふうに考えていました。
じっさいには想定とは異なるものでした。
最初に金丸さんに「マップをつくるに至ったきっかけ」を伺いました。きっかけは想像どおり大河ドラマに沼田城が登場する、ということだったそうです。
そして観光交流課として「沼田市を訪れる方に街を散策していただく」ことを考えたとき、店舗情報が掲載されている観光まち歩きマップがなかったため、「まち歩きに役立つマップをつくりたい」ということを念頭に置きつつ、沼田女子高等学校に相談をされたのだそうです。
「なぜ沼田女子高等学校だったのですか?」と質問しました。
まず、沼田城の城域だった場所に沼田女子高等学校があるという立地による理由があったそうです。城域で学校生活をおくり、ふだん歩き慣れている場所なため、"高校生ならではの視点"で楽しめるマップづくりを期待されたとか。
また過去にも「沼田ハイキングコース」をいっしょに制作して、生徒が観光ガイドをつとめたこともあったそうです。2010年に実施して「地理」の教科書にも掲載されたとか。
学校からしても初めての試みではないぶん、ハードルは下がりそうですよね。
つづいて「それまで観光用のまち歩きマップが、なかったのはどうしてですか?」とお聞きしました。
その理由は「店舗情報が入れ替わる可能性があった」「このあたりの人は街を散策する習慣がないので」といったことのようです。たしかに地方にいくほどクルマ中心の生活スタイルですし、日常的に歩く機会ってほとんどないですよね。
観光という視点からみても、近隣地域からやってくる人が多いのなら、やはりクルマでやってくる方が多いでしょうから、そういったニーズが少なかったのかもしれません(むしろ駐車場情報のほうが必要なのかも)。
これは今回伺った中では意外だったことのひとつですが、マップづくりに参加された生徒は自主的に集められたそうです。
ぼくは参加者については、たとえば部活動仲間だとか、サークルのような集まりから選抜されたのかなぁ、と漠然と考えていました。が、じっさいは校内で先生が説明されたあとに自ら「参加したい」と手をあげた約10人が携わったそうです。
「地域社会のことを学ぶ」といった教育的視座からの取り組みだろうなぁと想像していたので、市役所がこうした試みを――高校と共同で――おこなったというのがとても新鮮でした。
金丸さんにはマップづくりにおける意見の調整、フィールドワークのすすめ方や、手描きの絵をどうやって1枚のマップにしたのか(切り貼りされたそうです)、などなど全体の進行についての実務面もいろいろ教えていただきました。
観光マップを作ったあと、気になるのは成果ですよね。
「最初1万部発行されたそうですが、現時点でどのくらい増刷されていますか?」と伺ったところ、ゴールデンウィーク前に2万部、夏休み前に2万部を増刷して、現在は5万部が配布されたそうです。
観光案内所をはじめ、飲食店などから「マップを置きたい」と相談された場合はマップを渡して設置してもらっているそうです。ぼくも「真田丸展」の会場に置かれていたマップをもらってきました。
効果についても尋ねました。
沼田城址公園は無料で入れるため入城者カウントができなくて、また「真田丸展」も今年のみの開催だから前年との比較ができないため、具体的な数字は出せないものの、今年は大河ドラマの影響もあって、多くの観光客が街を歩いているし、マップを持って歩いている人も目立つようです。
すでに5万部印刷されているということからも、いい成果がでていると言ってもよさそうですよね。
観光パンフレットとはちがって、まち歩きマップは「現地で必要」な情報がつまっています。増刷されているのは手に取った人が多いと考えることができます。もしかすると地元の人にとっても貴重な情報になったかもしれませんね。
最後に「大河ドラマ終了後は、どうしても観光客数は落ちるでしょうが、次はどんなことを考えていますか」とお聞きしました。
今回マップをつくられたことで、地元の高校生が知っている情報を「伝える」ことができたそうです。そこであらたな視点からみたマップをいくつかつくってみたいとおっしゃっていました。
今回は「街歩き」を「高校生が案内」するという切り口でしたが、視点を変えることで、またちがった角度から市内を案内することができます。
さらにはマップをもとにしたまち歩きツアーや、地元の○○めぐり、といった企画があっても観光客のかたは、楽しめそうです。
観光マップをもとにした取り組みを全国の方々に「どうやって伝えるか」という面では攻城団がお役に立てそうだなぁと感じつつ、金丸さんにお礼をして、市役所をあとに。
2時間ほど団長と打ち合わせをして、沼田駅から帰路につきました。
金丸さんから伺った話を整理しながら、帰路の新幹線のなかでいろいろ考えました。
地域情報を発信するためのプロジェクトをおこなう場合、まずは地元の人が中心になって情報を集め整理をおこなうことから着手します。
その課程のなかで、「地域社会」や「地域の歴史」、つまり「どういう歴史的経緯があって、いま自分たちが暮らす街はできたのか」を学ぶことになります。
自分の街に戦国時代、どんな殿様がいたのかを知ってる人って少ないかもしれませんよね。
外に伝えるためには、まず自分たちが知り、学ぶというステップは大事だと思います。
その上で、観光に来られる方にとってわかりやすく、そして興味を持っていただけるような切り口や表現方法で伝えていかなければなりません。ここでは第三者の客観的な目線が大事になります。
地元目線の情報を、外部の目線でうまく通訳して届けるというのがポイントなのですが、うまくできているケースは意外と少ないのかもしれません。
また地元住民が自ら学ぶことによって醸成される空気づくりも大事なんだと思いました。
沼田市の場合は女子高生たちが主役となりましたが、その親御さんたちも含めて、地元の歴史を学び、誇りに感じられるようになったのではないでしょうか。
あるいは市外の人に伝えたいと思うようになった方もきっといますよね。
観光にいったときに「この街は、観光客をあまり歓迎していないなあ」という雰囲気みたいなものを感じ取ることってありませんか。これはよろしくないことです。「またこの街を訪れたい」と思ってもらえるどころか、あちこちで悪い評判が広まってしまいます。
ぼくらが七尾市で取り組む際も、ただ「マップをつくって終わり」ではなく、ひとりでも多くの地元の方にかかわっていただいたり、みなさんに応援していただけるようにしたいです。
そして観光客との交流を誰もが楽しめるような、街全体から歓迎ムードが伝わるような状況をつくっていきたいものです。
そして今回ぼくらが金丸さんから多くのヒントをいただいたように、ぼくらも全国の歴史コンテンツを活用して地域振興を考えてらっしゃる方々のモデルになれるようにがんばろうとあらためて決意しました。
こうして各地でさまざまな取り組みを実践されている方への取材、インタビューもこれから増やしていきたいと思いますので、「うちの地元ではこんなことやってるよ」という情報があればぜひお寄せください。
よろしくお願いします!
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