荒木村重に捕らえられ、土牢に押し込められた黒田官兵衛を安楽椅子探偵に備え、有岡城落城を危機に陥れた事件の謎を解いていきます。それで終わりかと思いきや、実は、それらの謎が一つになり、村重らを巻き込んで奔流となる物語です。有岡城と荒木村重の行く末について知っている自分には、どのようにしてそこに行き着くのか読み進めながらドキドキしていました。ミステリーとしても、歴史モノとしても楽しめます。
第166回直木賞受賞作品です。有岡(伊丹)城主·荒木村重と囚われの身である黒田官兵衛を中心としたミステリ系の小説です。
実は城巡りマニアより、遥かに歴が長いミステリマニアです。直木賞、山田風太郎賞受賞作にして、日本の4大ミステリランキング全1位の完全制覇の傑作です。さらに、歴史時代小説ランキングでも1位だそうです。ミステリ的な観点から言うと、ミステリとは元々意外と相性が良い歴史ミステリであり、信長と対峙した牢城戦中の有岡城(伊丹城)のみが舞台の閉鎖空間(広い意味での密室)ミステリであり、囚われの黒田官兵衛が謎を解く安楽椅子探偵物であり、独立した短篇が繋がっていって最後に実はという、凝った作りの作品になっております。この10年程は、日本のミステリ界はまさに米澤穂信時代だったのですが、さらなる最高傑作を生み出したと言ったところでしょうか。
さて攻城団的な観点から言うと、話は総構えを備えた有岡城内の牢城戦中の話で、面白くないはずがなく、荒木村重が訪れた安土城の描写も登場してきます。登場人物も、すべて実在した歴史上のおなじみの人物ばかりですし、最後はきちんと歴史的事実へと見事に帰結していきます。ミステリは好きじゃないという団員の方々にもお勧めできます。
そして結論とすると、そもそも官兵衛好きなんですが、あまり遺構は残っていないようですが、この本を携えて、有岡城を攻城しに行きたいものです。
荒木村重の有岡城の戦いを舞台に、籠城戦の間に起こる不可解な事件を土牢中の黒田官兵衛に解き明かしてもらう、といったミステリー要素と歴史が合体した作品です。
籠城戦の緊迫感や生活も丁寧に描かれていて、史実も知っているからこそ焦燥感を感じながら読み進んでしまいます。
ラストは史実に着地するのですが、一年の土牢生活が今後活躍する異形の軍師官兵衛を作り、彼によって村重は後世にまで名を落とす行動に出るようはめられたのかな、と本当に思えるほどでした。
そして、城は武力でだけでなく将が人心掌握できなくなった時に落ちるものかもしれない、と思いました。
反逆の城主 荒木村重と囚われの軍師 黒田官兵衛の有岡城(伊丹城)を舞台に繰り広げられる歴史小説です。
惣構えのお城での生活、勝ち戦での首検分の作法、籠城戦での家臣の働きなど、解りやすく表現されてます。
何故当主を追放をしたのか、家督を守るとはどういうことなのか、武士とはどうあるべきなのか、登場人物の心の葛藤が見えてきます。
この小説を書くきっかけになったという芥川龍之介の俊寛も読んでみたいです。
2021年山田風太郎賞受賞作品
タイトル | 黒牢城 |
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著者 | 米澤 穂信 |
出版社 | KADOKAWA |
発売日 | 2021-06-02 |
ISBN |
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価格 | 1760円 |
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