本日から榎本先生の連載「クーデターで読み解く日本史」をブログで公開していきます。
この連載も過去に出版された『クーデターで読み解く日本史』(マイナビ新書)をもとに再編集したものです。
この連載開始にあたってはちょっとおもしろいエピソードがあります。
というのも攻城団TVの番組企画として、ぼくのほうから「日本の歴史を『応仁の乱』とか『本能寺の変』のような変・乱を切り口に振り返るような番組をつくりたい」と提案したところ、榎本先生から「そのテーマで本を出してます」と返事が届きました。
(先生はたくさん本を出されてるのでじつはすべてを読んでないし、持ってもいないのです)
知らずに提案したことをお詫びしつつ、でもぼくと榎本先生のふたりが時期はちがえど同じテーマをおもしろいと感じたことは事実なので、ぜひ対談をやりましょうということになっています。
なので後日、「日本史上の変や乱」をテーマに対談動画の収録を予定しています。
榎本先生の本ではこれらを「クーデター」と表記していますが、内容はいわゆる「大化の改新」に先立つ「乙巳の変」から「大政奉還」そして「王政復古」までを扱っており、江戸時代までに起きたクーデターを解説しています。
ページ数の都合上、さすがに教科書に出てくるすべての「変」や「乱」が取り上げられているわけではありませんが、ざっと拝見したかぎりでは約70のクーデターが紹介されていたので、かなりの数になります。
今後、対談に向けてぼくのほうで「すべて」のリストを作成してみるつもりですが、この連載が番組の副読本みたいな位置づけになっていくのではないかと思っているので、ぜひ通読してください。
最後に榎本先生からコメントをいただけたのでご紹介します!
【クーデターで読み解く日本史】中央集権のカタチをめぐる争い――乙巳の変 - 攻城団ブログ - お城や歴史のおもしろくてためになる記事がいっぱい!
昔の教科書では「大化の改新」として習った方も多いと思いますが、この改革の端緒となった蘇我氏打倒のクーデターを「乙巳の変」と呼んでいます。
toproadさんが城がたり「よくわかる小牧山城」を企画してくれました。愛知県小牧市と調整してくださり、学芸員の方にZoomで話していただけることになりました。小牧山城の歴史、発掘調査の成果など、いろんな話が聞けると思いますのでぜひご参加ください。
つづきを読む昨年に続いて第6回目となる団員総会を開催したのでレポートを書きました。今年は去年と同じ会場でしたが、内容はかなりアップデートしています。とくに「お城ビンゴ」は盛り上がったので、今後の定番ゲームにしていきたいですね。来年はさらに多くの団員と集まりたいです。
つづきを読む美濃守護・土岐氏の庶流である久々利氏の居城、久々利城にも攻城団のチラシを置いていただきました。可児郷土歴史館と久々利地区センター、さらに可児市観光交流館で入手可能です。
つづきを読む小栗信濃守によって築かれた本陣山城(御嵩城)にも攻城団のチラシを置いていただきました。「東美濃の山城を制覇せよ!」キャンペーンの缶バッジ受取場所でもある、御嶽宿わいわい館で入手できます。
つづきを読む土岐明智氏の居城であり、戦国時代にはその一族である妻木氏の居城になった妻木城にも攻城団のチラシを置いていただきました。もとてらす東美濃で入手できます。
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クーデター。一般的には「非合法の、武力的な手段で政権を奪取しようとすること」を意味する言葉です。日本では「~の乱」「~の変」などという言葉が馴染み深いでしょうか。
本連載のコンセプトはこのクーデターという言葉をキーワードに古代から近世までの日本史を追いかけていくことです。陰謀未遂や武力を伴わない政変についてもあわせて扱うのでご注意ください。
ただ、もしかしたら「クーデターって何がそんなに面白いの?」と疑間を持つ人もいるかもしれませんので、少し説明をさせてください。
私個人の考え方としては、クーデターとは「男のロマン」です。なぜなら、クーデターこそはそれまで綿々と続く歴史の流れで蓄積してきたエネルギーが吹き上がる瞬間であり、歴史的ダイナミズムの最たるものだからです。
クーデターといえば「権力者が突然殺害される」とか、「家臣団が突如謀反する」というイメージが強いのではないでしょうか。「突然」「突如」という言葉に代表されるように、何が何だかわからないがとにかくそれまでの主君や権力構造が否定された、というわけです。
しかし、この見方は正しくないと思われます。クーデターが起きるにあたっては、必ずその前に伏線があるからです。それは単純な権力闘争のこともあれば、社会構造の変化でパワーバランスが崩れたり(貨幣経済が発達して武士が借金まみれ!)、外敵の接近で危機感が増したり(西洋列強に立ち向かうためには新しい国家体制が必要!)、といった事情であることも多いようです。そうした諸々の要素が積み重なり、内圧が上昇し続ければ、いつか必ず臨界点を突破する――そうして起きた爆発こそがクーデターなのです。
だからクーデターは魅力的で、面白い、ということになります。そこにあるのは単純な暗殺や戦争ではなく、蓄積された要素の結実であり、しかもそれが短期間に爆発するからです。そしてもちろん、クーデターの結果はその後の歴史に大なり小なりの影響を残します。
私がこのようなクーデターの面白さに気づくきっかけになったのは、本書で最初に扱っているクーデターでもある「乙巳の変(あるいは『大化の改新』)」です。中大兄皇子による蘇我入鹿暗殺をクライマックスとするこの事件は「長く政治を独占してきた傲慢な蘇我氏に対する反発」と一言で片付けられるのが普通です。
しかし、実際にはそれだけではありませんでした! 実は乙巳の変の時代、日本を取り巻く東アジア情勢は混迷の渦中にありました。各地で反乱やクーデターがあり、アジア情勢に詳しい者たちはその波がいつ日本へ到達してもおかしくないという危機感を共有していたようなのです。
新たな国家はどんな形であるべきか、その中心にいるのは誰であるべきか。中大兄皇子だけでなく、実は蘇我氏方にも将来に対するビジョンがあり、二つの意思がぶつかり合った結果、先に実力行使へ動いたのが中大兄皇子だった、というわけなのです。
このような歴史の裏に隠されているであろう事情に思いをめぐらせて以来、私はクーデターの面白さと魅力に着目するようになった、というわけです。
さらにいえば、大きな事件には必ず伏線があり、またその後に爪あとを残す――というのは必ずしも歴史的なクーデターに限った話ではありません。
たとえば、2009年には自民党の野党陥落と民主党による政権交代がありました。この時の政権交代は二大政党制への転換を思わせるものであり、当時の熱狂は凄まじく、それを記憶している人も多いはずです。しかし、この一件も単純に一度の選挙における勝ち負けやその時点での人気の多寡といった単純な構造で語れるものではありません。その背景には戦後の現代日本史に連なる多種多様な事情が存在し、それらの蓄積と交錯を経て巻き起こったのが歴史的な政権交代だったのです。
このように、単純に事件の経過に注目するだけでなく、「どうしてそうなったのか」「この後どうなるのか」というクーデターの前後に目を向けることで、歴史を大きな流れとして読み取ることができるようになるものです。本連載の目的はまさにその一点にあります。ぜひ、「クーデターの向こうに透けて見える歴史」を楽しんでください。
なお、本連載は拙著『クーデターで読み解く日本史』(マイナビ新書)を修正・再構成したものです。