もうすでにお二人の方がレビューされているので言わずもがなですが、エンジニアの視点でデータを数値化して検証していくのがとても面白いです。著者がこの本でずっと述べている日本のものづくりの素晴らしさにも感動しました。また、「秀吉に戦艦大和を運用させたら…」という仮定に一瞬「おぉ、それは見てみたい」と思いましたが、亡くなった大勢の方々には申し訳ないけれど、あそこで負けておいて良かったのだと私個人は思います。
造船関係のエンジニアであった著者が蒙古来襲、秀吉の中国大返し、そして戦艦大和について技術者視点で書かれています。最初のテーマである蒙古来襲では、当時蒙古軍が使用していた船を推定(さすが元造船エンジニアと感じる)し、その船を用いることにより上陸地点、状況に付いて理論的な検討を加えて、文永の役での蒙古軍早期撤退の原因を筆者なりに導き出しています。次のテーマである秀吉の中国大返しに付いては、歴史上の記録について、2万人の移動に当たっての物資(食料、武器等)の移動を具体的に見積もり、通常ではいかに不可能に近い移動であったかを証明した上で、成功するひとつの方法として海路利用の可能性も検討されており、興味深い内容となっていました。最後のテーマである戦艦大和は無用の長物だったのかについては、たった3年4ヶ月の活躍で華々しい戦果は上げていないが、日本のモノづくりの技術力の礎となり、また日本人の精神的支柱にもなっており、無用ではなかったと訴えると共に現在の理科教育に警鐘を鳴らしています。歴史を勉強している方が違った目線で歴史を見てみたい方にお勧めします。
船の専門家による蒙古襲来、秀吉の中国大返し、戦艦大和について検証した1冊。
古文書や書状による研究も大事だが、物理的な視点に立って検証することも大事なんだなぁと気づかされる。
確かに30kgの鎧を身に着けて8日続けて走って中国大返しするのは困難だろうし、将兵や馬の食料の手配は相当前から準備していないと無理だろうなと痛感。物理的、科学的検証は重みがある。
筆者の伝えたいことはなんかグッとくるし、検証内容はメチャクチャ面白かった。
タイトル | 日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る (ブルーバックス) |
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著者 | 播田 安弘 |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2020-09-17 |
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価格 | 1100円 |
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