小説とは違い、小西行長という謎の多い武将の足跡を文献から辿る一種の伝記のような本。
堺の町を運営していた有力商人・会合衆の一員であった小西一族。彼らが持つ財力と水上輸送力、そして、それらを自在に切り回すことのできる能力を秀吉に買われたことから、一気に権勢を誇るよう。秀吉統治前後の時代背景もしっかり書かれてあるので、堺の町をめぐる情勢が勉強になる。
信仰に生きた高山右近の姿を理想としながらも、同じようには生きられなかった行長の苦悩と焦燥、孤独感が描かれていて、右近のように全てを擲って「神の世界」に自らを捧げるほど純粋ではなかった、そんな行長の姿を、遠藤さんは否定的な目で見てないのが随所に伺える。
読みどころは、やはり行長が「活躍」する文禄・慶長の役。秀吉の誇大妄想から始まった愚かな戦を終息させるために、身を削って朝鮮・明に講和を求めた行長の姿が、切迫感に溢れている。
清正側視点からはとかく敵役として扱われることの多い行長だけれど、同じキリスト信者である作者により人間・小西行長の人物像をよみがえらせた本作は読みごたえがあった。
タイトル | 鉄の首枷 - 小西行長伝 (中公文庫) |
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著者 | 遠藤 周作 |
出版社 | 中央公論新社 |
発売日 | 2016-08-19 |
ISBN |
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価格 | 713円 |
ページ数 | 306ページ |
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