天下平定間近の織田信長と、そんな信長の野望を阻止せんと必死に食い下がる近衛前久。この不倶戴天のライバル同士の対決と葛藤が、この小説の基軸になっている。信長は、ひたすら天皇を超越する存在になろうとしている。朝廷を預かり、天皇家を守る前久にとって、それは到底容認できることではなかった。下巻では、2人の対立は傾斜度を増し、ついに前久は信長誅殺を決意し、その一計を案じることになる。 東宮夫人・晴子との道ならぬ恋に、信長自身うつつをぬかしている間にも、じわじわと形成される信長包囲網。前久は、最後の仕上げとして、光秀に信長暗殺の斬り込み隊長になるよう迫る。さらには、首謀者たちと引き合わせて、彼を「本気」にさせようとする。これが本能寺の変直前に開かれた、有名な愛宕神社の歌会である。 光秀が詠んだ「ときは今天が下しる五月哉」という句は、謀反のくわだてが読み取れると従来解釈されてきたが、著者はこれを一蹴する。光秀ほどの教養人が、自分の野心をひけらかすほど不作法ではないというのだ。むしろ、挙兵せよと促されたことに対しての覚悟の返答なのだと、著者は『平家物語』などを用いて開陳している。このくだりは、斬新な謎解きを見ているようで、非常にスリリングである。 本能寺の変を朝廷対信長の王権抗争ととらえることによって、この事件は俄然新鮮味とおもしろみを得た。無駄のない文体と描写が、さらにこの小説を力強いものにしている。(文月 達)
<下>のほうでは、武田氏を滅亡させて、徳川家康を安土城へ招待した前後から、本能寺の変に至るまでを、近衛前久や勧修寺晴子、明智光秀、羽柴秀吉との人間関係を蜜に描いています。本能寺の変以外にフォーカスして綿密に書かれている小説です。
タイトル | 信長燃ゆ〈下〉 |
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著者 | 安部 龍太郎 |
出版社 | 日本経済新聞社 |
発売日 | 2001-06-01 |
ISBN |
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価格 | 1728円 |
ページ数 | 401ページ |
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