攻城団からのお知らせ

石垣と石塁

マニアックな話ではありますが、「石垣」と「石塁」は厳密にはちがうそうです。

DSC01399

内部に土がなく、たんに石だけを積み上げたものを石塁と呼んでいます。 石塁は元寇の際に、博多湾沿岸に「石築地(いしついじ)」あるいは「元寇防塁(げんこうぼうるい)」と呼ばれる長大な石塁が構築されたのがはじまりで、当時の石塁はいまでも博多市の数カ所で見ることができます。

石塁の弱点は高く積み上げられない点にあります。 そのため、まず盛り土をして、その外側を石で覆うような石垣が生まれるわけですが、ようは「土塁」を石で強固にしたものが石垣ということですね。
(石垣には土塁や曲輪の崩落防止と、傾斜をより急にできるという効果があります)

石垣は石垣で水はけが悪くなるという問題があります。石垣内部に泥水が入ることで、ゆるみが生じて崩れやすくなるからです。そのため排水処理については石垣の裏側に「裏込石(栗石)」と呼ばれる小石を積み込んだり、「(とい)」をつくるなど、さまざまな工夫がしてあります。

高知城の石樋

また近年、史跡などとして整備されている城郭の石垣では、内側からの圧力により石垣が外側に膨らむ「孕み(はらみ)」という問題も起こっています。

この原因として、石垣の近くに植えられた樹木の根が押し出していることなどがあるそうですが、じっさい2011年の東日本大震災の際に仙台城や白河小峰城の石垣が崩落したのは、地震の影響だけではなくこの孕みも原因になっていたそうです。
(とはいえ、城址や史跡公園の木々を安易に伐採することもむずかしいので、なかなか困難な問題ですね)

石垣と城

中世の城郭においても2メートル程度の曲輪の「仕切り(崩落防止目的でもある)」としての石垣はありましたが、天守台などに用いる城石垣としてはじめて石垣が用いられた城は、観音寺城とも小牧山城ともいわれています。

以前は織田信長が上洛の際(1568年、永禄11年)に、六角氏の観音寺城を落とした際に穴太衆が築いた石垣を見て、その後は自身の城においても石垣を用いたという話でした。
(穴太衆は信長に雇傭されて安土城の石垣を積んだとされています)

一方で2010年に小牧市で行われた小牧山城の発掘調査では、小牧山山頂に精巧に築かれた石垣が確認されており、信長はもっと早く城に石垣を用いていたという可能性が出てきました。

小牧山城の石垣 小牧山城の石垣

調査はまだ継続されているので、これから新たにわかる事実も出てくるんでしょうね。

また石垣に用いられるのは花崗岩(かこうがん)が多く、そのため東日本の城ではほとんど石垣はありません。 とくに関東地方では小田原城や甲府城、江戸城くらいで、これは石垣の材料となる花崗岩の産地が限られていたためです(あとは財力の問題もありますね)。
なお沖縄(琉球)の城(グスク)では石垣に琉球石灰岩が使用されています。

DSC02042

天守が残っているお城は少ないんですが、石垣は多くの城で現存している遺構なので、いろいろ勉強してもっと深く味わえるようになりたいなと思っています。

   
サポーター募集
攻城団は無料で利用できますが、その運営にはたくさんのお金がかかります。5年後も10年後もその先も維持するために、このサイトを気に入ってくださった方はぜひご支援ください。何卒よろしくお願いいたします。 サポーター制度のご案内
この記事のURLとタイトルをコピーする
これからあなたが訪問するお城をライフワークとして記録していきませんか?(過去に訪問したお城も記録できます)新規登録(登録は無料です)

最新記事

攻城団レポート(2024年8月)

  • 月次レポート

毎月恒例の月次レポートを公開します。台風や大雨でなかなか出かけられない日が続いていますが、もう少ししたら出かけやすい行楽シーズンがやってくるのでぼくも遠出を計画中です。では今月も攻城団をよろしくお願いします!

つづきを読む

緯度経度のリンクをポップアップ表示に修正しました

  • お知らせ

訪問ガイドに緯度経度が入力されていた場合の地図の表示方法を変更しました。画面遷移せずポップアップで確認できるようになったのでかなり便利だと思います。

つづきを読む

共有メモの名称を訪問ガイドに変更しました

  • お知らせ

攻城記録を残す際の公開用のメモ欄の名称を「共有メモ」から「訪問ガイド」に変更しましたので、その理由などを説明します。

つづきを読む

備中高松城にチラシが置いてあります

  • チラシ設置報告

歴史的にも有名な水攻めの舞台でもある、備中高松城にも攻城団のチラシを置いていただきました。城址にある備中高松城址資料館で入手できます。

つづきを読む

京都で2024年の団員総会を開催します

  • お知らせ

今年も団員総会を開催します! 11月16日(土)に昨年と同じ京都アスニーの大きな和室を借りたのでぜひご参加ください。

つづきを読む

お城入門の目次

記事の検索

あなたのお城巡りをより便利に快適に、そして楽しくするためにぜひ登録してください。

新規登録(登録は無料です)

フォローしませんか

攻城団のアカウントをフォローすれば、SNS経由で最新記事の情報を受け取ることができます。
(フォローするのに攻城団の登録は不要です)

フィードバックのお願い

攻城団のご利用ありがとうございます。不具合報告だけでなく、サイトへのご意見や記事のご感想など、いつでも何度でもお寄せください。 フィードバック

読者投稿欄

いまお時間ありますか? ぜひお題に答えてください! 読者投稿欄に投稿する

トップへ
戻る