そもそも城とは、どのような過程を経て完成するものなのだろうか。
そのために考えなければいけないことは非常に多い。様々な人がかかわる大規模な工事も必要になる。分かりやすく簡潔にポイントを絞って紹介してみよう。
まずは、どこに城を築くかを選ばなければ始まらない。一口に城といってもここまで紹介したように多用な用途があるわけだ。それにあわせて、どんな城はどんな場所に築くべきか、あるいはどんな場所にはどんな城を築くべきか、というセオリーが存在する。これを無視しては何事もうまくいかない。
たとえば、江戸時代の軍学者が唱えた考え方に、「堅固三段(けんごさんだん)」というものがある。
城の防御力を三つに分けて考えるもので、城そのものの強さ、築城技術によって防御力を高めた「城堅固の城」、地形の防御力を活かした「所堅固の城」、領民や国人たちとの関係、国内の支城との連携によって堅い守りとした「国堅固の城」がある。
この三つがそろえば完璧だが、なかなかそうはいかない。今回作る城はこのうちどれに要点を置くべきか? 居城ならば「国堅固の城」であるべきだし、境日の城とするならば「所堅固の城」にしたい。しかし、事情が許さないのであればできうる限り「城堅固の城」とする……このように考え、判断する必要があった。
軍学者たちはもうひとつ、「陰(いん)の山」「陽(よう)の山」という概念も提唱している。
前者は三方を山や川に囲まれた場所で、敵は一方向からしか攻めてこられず、こちらも打って出るのは難しい代わりに非常に守りやすい。後者は独立した丘や山で、開けて見晴らしがいいことから立て籠もって守るのには向かない代わりに政治・統治の拠点にしたり、あるいはこちらから出撃して迎え撃つのには向いている。前者は消極的な「守りの城」、後者は積極的な「攻めの城」、というわけだ。