従来の城もなかの常識をくつがえすフォルムは同時に城もなかの可能性を広げる一品でもあります。ぼくもすでに購入済みで届くのを待ってるところです♪
今回ご紹介するのは、私も含めた城好きさんたちの記憶にもまだ新しい1年半前に衝撃が走ったお城、首里城の「城もなか」です。
その名を「首里城最中」といい、城もなか界の大物ルーキーなのです。
皮・あん・パッケージ・製造と販売・値段などの観点それぞれで、新しい切り口、あり方を提案し、新たな城もなかの境地を切り開いたとも言えます。
ながながと書き連ねてしまいましたが、「首里城最中」について最後までお付き合いいただければ幸いです。
プロローグ
気がつけば、城もなかマップを更新したのは1年ほど前のことで、コロナ、県をまたぐ移動の自粛、新しい生活様式……、城そして城もなかと、距離を置いた生活をしていたなぁと省みる時間がありました。
地元の城攻めもたまに出向いてみて、もっと活発にいろんな場所のお城に行きたい、そしていろんな城にまつわるお菓子や「城もなか」を食べたい!
でもなぁ、まだ動き出せる状況ではない……。
城攻め+「城もなか」が理想的な城もなかとの出会いとはいえ、オンライン城巡りやデリバリーやテイクアウトが新たな生活様式として確立している。
こんな時代だからこそ、長崎県の「五島 志高庵」さんの「石田城もなか」、そして京都府の「亀屋廣清」さんの「周山城もなか」を入手する際にも、使用した城もなか入手方法の伝家の宝刀「通信販売」を再び繰り出そう!
(いや、もう出し惜しみするようなものでもない、新しい城攻め、城菓子・城もなか入手の「新しい様式」として踏み出す時流なのかもしれない!)
そんなわけで、通信販売が可能な城もなかを探そうと、インターネットで検索!
するとどうでしょう、「首里城最中」というワードが目に止まり、ビビびっと稲妻に打たれたような衝撃を受けます。
あの焼失の傷を負った「首里城」で、新たな城菓子を発見! しかも最中! なんだか、これは城好き、城菓子好きとして、首里城に行って応援できない分、間接的に応援できるのではないか! という気持ちが全身を駆け巡りました。しかも今年、2021年(令和3年)4月19日に新発売された商品とのこと!
こりゃ買うしかないなと、買い物かごに入れて、購入ボタンをポチッと。
ほどなくして、いよいよ「首里城最中」が我が家にご到着~!
首里城の「城もなか」
あわ家惣兵衛さんの「首里城最中」
樂園百貨店さんとあわ家惣兵衛(あわやそうべい)のコラボ商品「首里城最中」です。
皮
もなか皮は、長方形に、首里城が浮き彫りされた形状をしていて、これまでのいわゆる城もなかの概念を破る挑戦的な皮といえる。城もなかの皮の多くは、ずんぐりとした城の形をしているが、なにも城の形はその輪郭からすべてが城型でなくてもいいんだ! と城もなか業界にコロンブスの卵的な一石を投じているともいえます。
天守や櫓はない城、例えば今回の首里城のように屋敷や宮殿形状の城など(足利氏館とかの館系もいけるかも)の異なるタイプの城にも、城もなかを生み出せる道を切り開いた。ぜひこの道を通って、これまで城もなかを生み出すことに躊躇していた城にも、城もなかの創作に踏み出してほしい! と思うばかりです
沖縄から通販しているので、作られてからどうしても時間がたってしまう。
もなかは皮であんを挟んでから、あんに含まれる水分を皮が徐々に吸ってしまい、皮のパリパリ感は時間と共に失われていき、皮の強度も下がっていく。
今回いただいた首里城最中の皮は、少しパリッと、少ししっとりとしている感じで、食べる分にはちょうど良い感じではありました。中のあんもぎっしり詰まっていたので、中身を拝見しようとすると皮が崩れそうで、少してこずりました。
あん
あんは沖縄海水塩を使った塩あんでバタークリームを挟み込んであります。
地元の塩をつかっているといるところから、地域性、オリジナリティを感じます。
これだけでも沖縄らしさを感じる、特徴的な城もなかであるのですが、さらにバタークリームが挟まれていることで、食べたときに城もなかのもなかっぽい風味だけでなく、これを超越した、表面的でない深みのあるというか、単色でないカラフルなというか、ソロでなくセッションというか、ちょっとびっくりするくらいに意外で、そしてまた食べたいと感じました。
意外さという意味では、もなかという日本伝統バチバチの和菓子の基本(皮、あん)は残しつつも、琉球王国、異国へ旅行に行って食べる、文化の異なる食べ物のように感じる“新種もなか”ともいえます。
食べるだけでリゾート旅行気分! そんな気持ちを生み出す源が、このあんにあると感じました。
パッケージ
美しい……。
新種のもなか、いかにも琉球王国の城もなかにふさわしい、パッケージも斬新で印象的。城もなかのベストドレッサーともいえるパッケージ。沖縄の伝統工芸の紅型を用いて、首里城の姿が鮮やかに力強く、華やかに、色とりどりで見ているだけで元気になる。
これから復興の道をたどる首里城の応援の旗印ともいえるパッケージじゃないかと思います。
なお、このパッケージのイラストは、第10回りゅうぎん紅型デザインコンテスト」デザイン賞受賞の紅型作家・金城宏次さんの「首里城」という作品だそうでうす。
そしてもうひとつパッケージでお伝えしたいこと、それは箱型であることです。
城もなかのパッケージの多くが袋状の包みです。それを首里城最中は箱型にしている。箱であることは、最中にとってはとてもありがたいです。なぜなら袋状の包みだとどうしても運搬時の衝撃で中の城もなかの皮が欠けたり潰れたりしてしまうことがあります。箱のパッケージでは衝撃から守ってくれる役割をしてくれている。
(箱をつぶすような大きな衝撃は当然だめですけど)
多くの城もなかがおそらく考えていただろうけど、なかなか(価格面などで)できなかったものだ。それをやったというところがすごいぜ!
さらに自分は4個セットを買わせていただきましたが、紙の箱の個包装に加え、4個を束ねて透明なプラスチックケースに入っていた。さらに城もなかの天敵衝撃からの防衛策は万端ですばらしい。よく考えられているなと思いました。
4個セットのパッケージは中身がなくなっても美しく、なんだか芸術的なので、空箱は自分の素晴らしき城菓子パッケージコレクション入りしまして、わが城の飾りとして彩っております。
製造と販売
大体の城もなかをふくめ、城菓子は、現地のお菓子屋さん、和菓子屋さんでそこでつくって、販売していることが多い。ただ、もなか皮については、皮の製造ができる企業が限られていることから、全国各地のもなか皮屋さんから仕入れていることが多い。三層角右寄り型の城もなかがよく見られる理由も同じもなか皮屋さんから仕入れているからという理由もあるよう。
※ 三層角右寄り型
三層の天守(櫓)であり、石垣の角が、中央より右側に寄っているもなかの皮の型のひとつ。さて、この「首里城最中」については冒頭で「樂園百貨店さんとあわ家惣兵衛(あわやそうべい)のコラボ商品」と紹介したとおり、製造元はあわ家惣兵衛(あわやそうべい)さん(東京都練馬区大泉学園7-2-25)で、販売は樂園百貨店さん(沖縄県那覇市久茂地1-1-1 デパートリウボウ2F)で限定販売という形。
とくに、あわ家惣兵衛さんは、東京駅丸の内駅舎最中といった大変精巧なもなか皮を用いた商品を製造販売しており、匠の技をもつお菓子屋さん。その技と首里城の出会いによって、首里城最中が生まれたといえる。
首里城最中は、もなか皮を仕入れているということではなく、商品そのものを仕入れて対象のお城の近くで販売しているというNewタイプ。
首里城最中は、首里城でしか売れないような巧みに首里城を表現したもなか皮を使っているので、他の城で同じ商品が販売されて別の城の城もなかになることはなく、首里城の城もなかとしてよいだろう。
(もしかしたら、既存の城もなかの中にも、こういうタイプ(作っているところは別の場所(他県)で、売っている場所にちなんで○○城の城もなかとしているタイプ)が他にもあるかもしれないし、同じ商品を別の城で販売して城もなかとしている例があるかもしれないけど、その存在の有無については、別途調査が必要です)
値段
首里城最中のほかと違うところは価格にもある。通常、城もなかは100円~200円程度のが多い。しかし首里城最中は、1個410円!!
一般的な城もなかの数倍。沖縄の城もなかということで、リゾートのラグジュアリー感が伝わる価格だ。お土産とするにも貴重な一品である。いろいろなことを考えると、まぁこの価格でもいいかなと納得する。
- 製造元が東京で、その輸送費(多分空輸?)がかかっていること
- 首里城最中の専用皮を使っていること
- 贅沢にも、ひとつに2種類のあんをはさんでいること
- パッケージがグラフィカルなデザインの箱状であること
それぞれの構成要素がすべて贅沢というかこだわっている。その分、お店側でもだいぶ努力されておられるとは思うが、価格にどうしても跳ね返っていると考えると、それだけのものなら……と思ってしまう。
売り上げの一部が首里城の復興への寄付となるとのことだから、その分も込み込みだと想定して、もろもろ考えると高いというよりむしろ安いのかもしれない。
美味い城もなか食べて、首里城復興のお手伝いができるなんてプライスレス。
ちなみに首里城復興への寄付については、お店に聞いたら、価格の何%とか、いくらとかは決まってなく、寄付の時期もいつとは決まってないようでした。たっくさん売れて大々的に城もなか寄付なんてなれば、いいなぁ。
沖縄でしか生まれない城もなかだったのかもしれないとも思う。沖縄というリゾートでの特別感・非日常感がこの価格の城もなかが生まれえた土壌だったのかもしれない。
(こぼれ話)「城もなか」なのか論争
この「首里城最中」は、城にちなんだお菓子であるため、首里城の城菓子には間違いないが、「城もなか」になるのかどうかという論争があるかと思います。
さて、城もなかの定義を改めて確認してみよう。
城もなかとは、その名のとおり、お城の形をした「もなか」です。
その多くはお城の天守や櫓を模したもなかの皮に、つぶあんなどのあんを挟んだものです。全国各地に城もなかは存在しており、その特徴は千差万別、多種多様。
(キミは「城もなか」を知っているか? 全国城もなかマップのご紹介より)
たまに「〇〇城最中」というネーミングだが、城の形をしていない、単純な最中もある。
この場合は、自分の城もなかの定義では城もなかには該当せず、城菓子の最中のジャンルになる。もちろん城菓子ではあるので、それはそれでわくわくする城菓子ではあるのだが、城もなかはあくまで、もなかの皮が城の形をしていないといけない。
それでは首里城最中はどうだろう。
皮が城の形をしているか。 → OK
よくある城もなかは、皮そのものが天守や櫓の形をしている(三層角右寄り型=五層の天守型・櫓門型)が、首里城最中はそうじゃない。長方形の皮に首里城の正殿が浮き彫りにされているわけですが、これまでにはなかった発想で、城の形をしたもなかの皮作り出してきた。皮全体ではなく、皮に城が形取られている。「皮が城の形をしている」に該当すると判断し、首里城最中も城もなかのひとつとすることにしました。
(こぼれ話2)首里城最中との出会い
じつは、首里城最中を見つけたときに衝撃が走った理由はもうひとつ。
城もなかマップを作っていた自分だからなのかもしれないですが、首里城がある沖縄県は城もなかマップでは白地で、城もなかの誕生を待ち望んでいた場所。ついに色塗り(城もなかがある都道府県は城もなかマップでオレンジ色になる)ができる! という思いが身体中を駆け巡ったというわけです。
まだ城もなか未発見の地が全国にはあるので、ぜひこれからも探究を続け、いつの日か「城もなか」の全国制覇、天下統一を果たしたいところです。
(最新の城もなかマップの掲載はこちらにあります)
購入について
「首里城最中」が買えるお店である、樂園百貨店さんは那覇市久茂地のデパートリウボウの2階にあり、デパートリウボウは国際通りに面しているので、沖縄でのお土産購入の際にぜひとも立ち寄りたいところです。首里城からはちょっと遠いですが、お土産購入でよく訪れる国際通りで買えるというのは、とても都合いいですね。
なお、デパートリウボウは1991年(平成3年)にパレットくもじにオープンし、2021年(令和3年)で30周年ということで、開店記念日の4月19日に発売された記念すべき城もなかでもあります。
首里城には数年前に行ったっきり、沖縄へいくのはなかなか気軽にはいけないので、次に行けるのはいつの日か……。でもまた、行きたい!!
首里城はもちろんのこと、勝連城や座喜味城、中城、今帰仁城、安慶名城、玉城、知念城、具志川城、浦添城などなど、たくさん城跡があるので、まだまだ行き足りない場所です。首里城みたいな、象徴的な建造物がなかなかないので難しいかもしれないけど、こんなに城があるので、首里城に続いて沖縄でどんどんニュータイプの城最中が誕生、普及してほしいと願うばかりです。
打倒ちんすこう! 琉球・城最中が、沖縄土産の新世代をけん引してほしいなと思う次第です。
今回、私が利用した通販ですが、以下のサイトから注文可能です。支払方法はクレジットカードのみでした(2021年5月現在)。
営業時間 10:00~20:00 / 定休日 1月1日 / 098-867-1171(代表)
城もなかの新時代の到来!
あん、皮、パッケージなど、それぞれの観点からみても、首里城最中の登場は、城もなか業界に激震が走る、新しい城もなかのスタイルを提示した、大物ルーキーの登場だったわけで、この誕生がきっかけで、既存の城もなかが更なる進化を遂げることや、新しい城もなかが続々と誕生してくれることを祈るばかりです。
琉球王国ならでは、地域限定の城もなかのスタイルで終わらず、城もなかの新しい時代の幕開けが始まったと期待しています。
おわりに
「首里城最中」は次の点で新時代、そして琉球王国の城もなかである。
- 沖縄らしい、沖縄海水塩を使った塩あんとバタークリームのコンビネーションが生み出す、異国情緒とリゾート気分が感じる洋風な「あん」
- 東京の匠の技とのコラボレーションで生み出された、長方形に精巧な城型を浮き彫りしてあるニュータイプの城もなかの「皮」
- 沖縄伝統技法の紅型のデザインコンテスト受賞者のデザインを用い、アーティスティックで、伝統をまとった新鋭という感じの箱の型の「パッケージ」
首里城最中をきっかけに、新しい城最中の世界、新たな城もなかの時代の到来を感じつつ、城もなか愛を深めることができました。
今回も通販で購入という形になりましたが、いつか必ず首里城攻めを再び行い(一度行ったことがあるので)し、その後、今度は店頭で首里城最中をお土産として大量買いすることを今後の目標として掲げたいと思います。
なかなか今のご時世では県外に行くことも、また沖縄というリゾートへ小旅行することも、物理的にも精神的にも道は遠いように感じますが、城好きとしては、首里城の再建後の姿を拝見しにいかずにはいられないので、きっとまた行くことになるでしょう。その時には首里城最中をきっかけに、沖縄が城もなか大国(県)となっていてほしいなと夢を見ています。
燃えてしまった首里城の応援に、コロナが落ち着き、また沖縄へ自由気ままに旅行できる日を楽しみにして、この苦境を乗り切って行きたいです。
ぜひ皆様もこの機に、首里城を応援する意味も込めて、通販での「首里城最中」を味わってみてはいかがでしょうか。
(コロナ禍でちょっとむずかしいですが)もし首里城へ行かれる方がおられたら、是非、樂園百貨店さんで「首里城最中」もご賞味くださいませ。
ご覧になった皆様が、これを機にお城めぐりのお供に城もなかを選んでいただけたら、そして城もなかとの出会いのきっかけとなれば幸いです。
それでは、
城めぐりのおともに「城もなか」を!
よき「城もなか」との出会いがありますことを祈っています。
ぜひみなさんも城もなかや城菓子の感想をお聞かせください!