お城のシンボリックな存在といえば何といっても天守です。
天守は屋根の形から大きく二つに分類されます。
望楼型天守(ぼうろうがたてんしゅ)と層塔型天守(そうとうがたてんしゅ)と呼ばれるものです。
犬山城天守を例に解説します。
望楼型天守(ぼうろうがたてんしゅ)
天守の形
望楼型天守は一階もしくは二階建ての大きな入母屋造り(いりもやづくり)の上に、1階建てから三階建てぐらいの大きさの望楼(ぼうろう)、いわゆる物見を載せたものです。
望楼が屋根の上に乗っているため、望楼型天守(ぼうろうがたてんしゅ)と呼ばれています。
世界初の天守は望楼型
世界で初めて天守を建てたのは織田信長と言われていますが、その代表的な城が安土城です。
安土城は五重天守で望楼型だったと考えられています。
安土城もそうですが、望楼型天守の場合は、天守台が正確な正方形や長方形(これらを矩形=くけいと言う)でなく、不等辺多角形であっても建てることができます。
さらに入母屋造りが二階建ての場合、一階と二階の間取りがほとんど同じつくりになるため、一階の柱が必ず二階の柱の下にくるなど、とても頑丈な造りになっています。
さらに、上下を一本の柱で貫く通し柱や巨大な心柱なども使われました。
層塔型天守(そうとうがたてんしゅ)
層塔型天守の形
層塔型天守は一階から最上階まで順番に積み上げていくような形の天守です。
藤堂高虎が生み出した
層塔型天守は、藤堂高虎が慶長9年(1604年)に建てた今治城が最初といわれています。
その後、慶長の築城ラッシュの時には層塔型天守が広まり、たくさん建てられることになりました。
層塔型天守は、造る時にとても効率が良く、それが理由で広まったと考えられます。
構造が単純で規格化されたため工期が短く、また、望楼型天守のような屋根裏部屋がないため、間取りが広くとれました。
層塔型天守の一階平面は正方形か正方形に近い長方形です。
二階以上はその一階平面を小さくしたものを上に乗せていくようなイメージです。
このようにして高層建築を短期間に作っていったのです。
犬山城天守は望楼型
犬山城天守は望楼型天守か層塔型天守か、どちらなのか見てみましょう。
シンプルな形
犬山城天守は、三重四階地下二階建ての望楼型です。
犬山城天守の形はいたってシンプルです。
二階建ての入母屋造りの上に二階建ての望楼が乗っかっている。それだけです。
一階部分には付櫓が二つ付いていますが、入母屋造の形もさほど複雑ではなくとてもシンプルです。
望楼型の代表例
昭和以降に各地で模擬天守が建てられましたが、そのモデルになっているのも犬山城です。
つまり ザ・望楼型というシンプルな構造をしているのが特徴でもあります。
現存12天守は望楼型?層塔型?
現存12天守は望楼型天守か、層塔型天守かを下の一覧表にまとめました。
あわせて、階数や天守建造年代も入れておきました。
国宝の犬山城、姫路城、彦根城、松江城の3城は天守築城年代も古く、望楼型です。
松本城は層塔型と書いていますが複雑な形をしているので、望楼型の要素も層塔型の要素も持っていると言えます。
天守の形が多様な年代の築城ということが伺えますね。
丸岡城、高知城も望楼型ですが、あとの天守は層塔型になります。
まとめ
何気なく見ている天守でも、望楼型天守か層塔型天守かを比べながらお城巡りするだけでもいろいろな発見があるかもしれません。
国宝に指定されている天守のほとんどが望楼型天守と言うのも興味深いですね。
ということで、天守には2つのタイプがあって望楼型天守と層塔型天守というんだよ。犬山城天守は典型的な望楼型天守だよ、というお話でした。
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